ゆらゆら。ゆらゆら。

 視線の先で揺れるそれを、手を伸ばすことも出来ずに、ただ見つめている。
 今は大きなグローブに覆われている、その手。とても大きくて、温かくて、……安心できて。


 今は二人きりで買い物に出ていて。周りは人込み、しかも市場ともなれば誰も自分たちのことなど注意を払っていないなんてことは分かっている。
 だから、そういった面では問題はないはずだ。問題はないはず、だけど。

(・・・・・・・言えない、よなぁ)

 手を繋ぎたい、だなんて。
 別に断られるのが怖い訳じゃない。きっと断られないし。多分、これは自惚れじゃないはずだ。むしろ嬉々として繋いでくれると思う。
 なのにそう言えないのは、偏に恥ずかしいからだ。

(いやだってもう子供じゃないし、大体大の男二人が手を繋ぐってどうなんだ)

 悪くはないだろうけど良くもないよな、と思う。あまり見かけるもんでもないし。そんなものを自分からしたい、なんて。
 いや、なんだかんだ言っているが、要は、相手に触れることそれ自体が恥ずかしいのだ。ただ手と手が触れ合うだけだと自分に言い聞かせても、言いようのない気分になる。背後から抱きつくとかの方が、表情が見えない分恥ずかしくない気がしてくる。
 かといって、今それが出来るかといったら別問題ではあるが。

 いや、何だか思考がそれてきたぞ。そうだ、手を繋ぐだけだ、そう言えば良いじゃんか。言うのが難しいなら、その手を勝手に繋いでしまえば良いんだ。ガイは驚くかもしれないけれど、振り払いはしないだろう。

 そう思うのに、やっぱり手を伸ばすのは躊躇われて。溜息を一つ吐いて俯いたら、目の前に自分を悩ませていた手が差し出された。
 ばっと顔を上げると、とても楽しそうな顔のガイがいて。


「ほら、繋ぎたかったんだろ?」


 その表情に、ジェイドの「ルークは思考が全部顔に出ますねぇ」という言葉を思い出した。 きっと今まで自分がぐるぐる考えてたことは、きっと全部ガイにだだ漏れで。
 しかも、今のガイの様子からすると、大分前から気付いていたくせに自分の反応を楽しんでいたんだろう。

「 ―――――― っっ!!!!!」

 顔が赤くなるのが分かる。それにまたガイが笑いを零す。遊ばれていたことに文句を言おうにも、理解してしまった事実に頭は混乱して言葉を紡ぐことは出来なかった。
 悔しかったから、差し出された手に自分の手を重ねて。

 力の限り、握り締めてやった。


1. 手を繋ぐ
道端でいちゃつくバカップル。


Back