誰かが話しているのを耳にしたのか。その子供は自分に駆け寄ってくるなり、そう質問した。
それを知らない、という事実に一瞬驚くが、それも当然だろうと思う。彼は記憶を失って以来、ほぼ、この邸の人間としか交流を持っていない。両親と使用人しかいない中では、内緒話などする相手もいないだろう。
そして、それがどんなものかも、記憶どころか全てを失ってきた彼が優先して憶えるものでもなかった。
自分よりかなり低いところにある子供の顔を見る。視線が合うと、早く教えろ、と目で、そして服の端を引っ張って訴えてくる。
その姿に思わず笑みを零し、高さを合わせるためにしゃがんだ。不思議そうな顔をする子供にまた笑みを零して、その小さな耳に、何を告げようかと思いを巡らす。
「……好きだよ、ルーク」
迷うというほどの間もなく、自分でも驚くほど、するりとその言葉が零れた。しまった、とも思ったが、子供はその言葉の意味に気付くこともなく、くすぐってぇ、と笑っている。こうやってその人だけに言葉を伝えるんだ、と教えてやると、何だか難しい顔をして黙り込んでしまった。
その様子に安心したような、淋しいような気持ちを抱えて仕事に戻ろうとすると。
ぐい。
子供が服の端を掴んで離さない。使用人の身である自分には、課せられた仕事がまだ残っている。いつまでも構ってやるわけにはいかない。どう宥めようか、と再びしゃがむ。
「俺も! 俺もないしょばなしする!!」
……こうなることは、予想してしかるべきだった。まぁ、……このまま駄々こねられるよりは、素直に従った方が良いよな。
残っている仕事を頭の中で並べながら、子供と同じ高さに顔を並べて。
この子供が自分だけに伝えてくれる、その言葉を待った。
5. ひそひそ話
ガイ様はきっと、「俺もガイのこと好きだよ」とかそんな言葉を期待していたに違いありません。
何度でも言います。篠原はオチをつけないと気がすまない子です。
こんなの描いてますが、邸時代のガイ様は愛と憎しみのロンドだったと真剣に思っています篠原です。
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何度でも言います。篠原はオチをつけないと気がすまない子です。
こんなの描いてますが、邸時代のガイ様は愛と憎しみのロンドだったと真剣に思っています篠原です。
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