かつん。
もう深夜といってもいい時間。何か硬質のものがガラスに当たる音がして、ロイははっと振り返った。窓ガラスの向こうには、闇に負けない光を放つ金の少年。エドワードだった。
今ロイがいる執務室は一階ではないのに、窓の外にいるということは大した問題ではない。幼く見えるが、彼とて優秀な錬金術師だ。それぐらい造作もないだろう。
問題は、ここ数ヶ月姿を見せていなかった彼が、何故こんな時間に此処に現れたのかということだった。
話をするにしても何にしても、このままでは都合が悪い。そう判断して、室内に入れようと窓に手をかけたロイを、エドワードは手で制した。首を傾げるロイに、エドワードは苦笑する。
深夜ということで声を潜め、ガラスを隔てている所為でよく聞き取れないが、エドワードは今日の夕方にこちらに着いたこと、司令部に顔は出したがロイが忙しそうだったので声はかけなかったこと、早朝の列車でここを発つことを告げた。
「な……」
ずっと、会っていなかったのだ。会いたかったのに、会えなかったのだ。なのに、やっと会えたと思ったら、もう旅立つと言う。
文句の一つも言ってやろうと思い ――――― 口を噤む。
エドワードは、ロイに会いに来ていた。なのに、その機会をふいにしたのは他でもない、ロイ自身だ。しかも、急な用事が入ったとかではなく、溜まった書類の処理をしていたというのだから、ロイに文句を言う権利はない。その権利はエドワードにこそある。
それでも、文句の一つも言わずに会いに来てくれたのだ。たとえ、それが僅かな時間だとしても。
だから、感謝と愛しさをこめて、呟く。
「………ありがとう」
この言葉がエドワードに届いたかは分からないが、エドワードは、嬉しそうに、笑った。
そう、きっと、触れてしまったら離れ難くなるから。だからこその、このガラス一枚隔てた距離なのだろう。まだ、立ち止まる訳にはいかない、自分達のため。
もう帰るよ、と身を翻そうとしたエドワードを引き止めて。せめても熱を伝えようと、ガラス越しに口付ける。
もう一度、二人とも無事に会おう、と。その誓いの代わりに。
もう深夜といってもいい時間。何か硬質のものがガラスに当たる音がして、ロイははっと振り返った。窓ガラスの向こうには、闇に負けない光を放つ金の少年。エドワードだった。
今ロイがいる執務室は一階ではないのに、窓の外にいるということは大した問題ではない。幼く見えるが、彼とて優秀な錬金術師だ。それぐらい造作もないだろう。
問題は、ここ数ヶ月姿を見せていなかった彼が、何故こんな時間に此処に現れたのかということだった。
話をするにしても何にしても、このままでは都合が悪い。そう判断して、室内に入れようと窓に手をかけたロイを、エドワードは手で制した。首を傾げるロイに、エドワードは苦笑する。
深夜ということで声を潜め、ガラスを隔てている所為でよく聞き取れないが、エドワードは今日の夕方にこちらに着いたこと、司令部に顔は出したがロイが忙しそうだったので声はかけなかったこと、早朝の列車でここを発つことを告げた。
「な……」
ずっと、会っていなかったのだ。会いたかったのに、会えなかったのだ。なのに、やっと会えたと思ったら、もう旅立つと言う。
文句の一つも言ってやろうと思い ――――― 口を噤む。
エドワードは、ロイに会いに来ていた。なのに、その機会をふいにしたのは他でもない、ロイ自身だ。しかも、急な用事が入ったとかではなく、溜まった書類の処理をしていたというのだから、ロイに文句を言う権利はない。その権利はエドワードにこそある。
それでも、文句の一つも言わずに会いに来てくれたのだ。たとえ、それが僅かな時間だとしても。
だから、感謝と愛しさをこめて、呟く。
「………ありがとう」
この言葉がエドワードに届いたかは分からないが、エドワードは、嬉しそうに、笑った。
そう、きっと、触れてしまったら離れ難くなるから。だからこその、このガラス一枚隔てた距離なのだろう。まだ、立ち止まる訳にはいかない、自分達のため。
もう帰るよ、と身を翻そうとしたエドワードを引き止めて。せめても熱を伝えようと、ガラス越しに口付ける。
もう一度、二人とも無事に会おう、と。その誓いの代わりに。
11. ガラス越しの口付け
ガラス越しとかの「お互い好きでそれは分かってるけど今はまだ」感(分からん)は、何となくロイエドイメージ。
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