広く、綺麗に片付けられた部屋。前に訪れたときから大分経っているというのに、相変わらず物は増えていない。それが持ち主の性格を現しているようで、この部屋を無機質だと感じたことはあっても、嫌だと感じたことはなかったはずなのに。
 今は、それが何だか ――――

 沈みかけた思考を、頭を振ることで中断させる。
 いや待て待てオレ。それは何か違うだろ。そりゃここは大佐の家で、訪問は初めてではないとはいえ、まだくつろげる程慣れてもいなくて。事件なのか急に大佐が呼び出されて行ってしまって、今この部屋に一人で取り残されているとしても。

「・・・・・・・・・・」

 淋しい、なんて。
 そんなのは。

 ただ。そう、ただ。
 オレが旅に出ている間、その長い間、大佐はこの何処か冷えたような印象の部屋で、一人で待ってくれているのだろうかと。そう思って。忙しい人だから、そんなにオレのことばかり考えてなんていられないんだろうけど。それでも、そうなのだろうかと、そう思ってしまって。

 そう思うと、オレなんかがあの人を独占していいのかとまで考えてしまう。だってあの人なら、優しくていつでも側にいてくれる綺麗な人がすぐにでも見つかる筈だ。そんな淋しさを埋めて癒してくれる存在を手に出来る筈だなんてこと、分かってはいるんだ。
 そして、そんな存在が必要であることも。

「……あー………」

 すぅ、と肺いっぱいに空気を吸い込んで。ぐ、と軽く息を止めて。ぷはぁ、と全て吐き出す。
 空気と一緒に、この最低な思考まで、全てを。

 好きだと言ってくれて。待っていてくれて。それを自分は受け入れたのだ。好きだと、ここに帰ってくると返したのだ。
 ならば、自分のこの考えは、相手と自分に対する裏切り以外の何物でもない。それらも全て理解した上でこの関係を始めたはずだから。なのに、相手に悪いからなんていうのは、侮辱だ。

 そう、だから今自分がするべきことは、そんなことをぐるぐる考え込むことではなく、恐らくもうすぐ帰ってくるであろう大佐のために何かをすること。
 部屋の掃除なんていう時間じゃないし、夕飯の準備なんか良いかもしれない。しばらく料理なんてしていなかったが、まったく出来なくなってることはないだろう。多少まずくても、食えない物じゃない筈だ。

 そう決めたら何だか楽しくなってきて、メニューを決めるべく、一人暮らしには大きめの冷蔵庫の戸に手をかけた。


16. 帰りを待つ
最近ぐるぐるしてる一人語り文ばっかり書いてる気がします・・・・ぎゃふん。


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