「"俺"は存在していてもいいのかな」

 ぽつりと零してしまった言葉。声に出したつもりはなかったけれど、目の前にいたガイの表情が強張るのを見て聞こえてしまったことを知る。
 ガイのあまりの様子に、気にするなと、なんでもないとそう言いたかったけれど、出来なかった。これは、あの日自分がレプリカだと知らされてからずっと考えていたことだから。

 レプリカ。本当なら存在するはずのなかった人間。しかもオリジナルには敵わない、欠陥だらけの模造品。

 "俺"自身が必要とされたことなんて、今まで一度もなかった。
 公爵家の人間として、王家に連なる者として、超振動を起こせる人形として。俺にあった価値はそれだけだった。ナタリアのように、そういった身分を失ってもなお誰かに求められるような生き方なんてしてこなかった。アッシュの代わりとしても、超振動を制御出来ない役立たず。
 自分なんて存在しない。代わりにもなれない。自分を生み出した人に存在を否定された俺は、どうすればいい? どうしたいんだ? 何を望む?

 あいつと違う人間であることを証明したい? (あいつより劣っている人間だと?)
 それとも、本当は ―――― あいつに、なりたい? (出来る訳ないと知っているのに?)

 答えの出ない問い。他の誰にも答えなんて出せないことは、何となく感じていたから。だから、ずっと言わずにいた。……言えずに、いた。
 この問いに対して肯定されるのが怖くて堪らなかった。否定されたところで、納得出来ないくせに。

 だから、答えを聞かなくて済むよう話題を変えようとして。視線を上げた先のガイの表情が、恐らく自分なんかより泣きそうで、動けなくなった。
 そんな、そんな表情をする必要なんかないんだ、だって俺はレプリカで役立たずで、大罪人で ―――

「俺、は」

 震えてる声。
 それでも、何かを俺に伝えようと搾り出される声。

「お前がいなくなったら、………嫌、だよ」

 嫌だ。
 その否定でも肯定でもない言葉は、驚くほど自然に俺の中に落ちてきて。無意識のうちに、一粒、また一粒と涙が溢れてきた。

 止めなきゃ、と思うのに、そんな想いとは逆に更に流れてきて。見られちゃいけない、と顔を自身の腕で覆えば、痛いくらいにガイに抱き締められて。
 堪らなく、なって。

 許されないと知りながらも、声を上げて泣くことを抑えられなかった。


18. 思い切り泣き叫ぶ
……薄暗い上に中途半端に終わります(お前)。


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