さっきまで隣を歩いていたのに、その声が後ろから聞こえてきて、慌てて振り返る。
笹塚さんはやっぱりいつもの表情だったけど、それが何処か困っているようで。
「弥子ちゃんが頑張ってるのも凄いのも分かってるけどさ、あんまり無理しないでよ」
そう言いながら、大きな手のひらで私の髪を掻き乱す。
そんな行動を示しながらも、やっぱり表情は変わっていなかったけれど。
……あぁ、心配してくれてるんだ。
そう思えて、それがどうしようもなく嬉しくて。だけど、「ありがとう」と素直に言えるほど大人でも子供でもない私だから。
だから、仕方なく「何するんですか」と頬を膨らませてみせた。
そうしたら、困ったような雰囲気が少し和らいで。
あぁ、「ありがとう」と言えていたなら、もしかして笑ってくれたかもしれない、と思った。
19. 説教する
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