今目の前にいるガイは。何かを言いかけて、ためらって。そんなことの繰り返し。
 そんなのが、ここ最近ずっと続いている。

 なあ、何を言いたいんだよ。そんなに言い難いことなのかよ。
 俺が嫌になったなら、離れたいっていうなら、ちゃんと言ってくれ。もう覚悟は出来てるんだ。お前と離れる、お前を離す覚悟は。

 俺がレプリカで公爵家の子息じゃないことが分かって、お前が仕える理由がなくなったときに、この覚悟をしなきゃいけないことを知った。
 そして、お前が公爵家に恨みを持つ人間だと、持って当然だと知ったとき。やっと、この覚悟が出来たんだ。

 ちゃんと、笑って手を離すから。今までありがとう、って笑うから。
 ……少なくとも、お前の前でだけは。

 もう、そんな姿を見ていたくないんだよ。目を逸らされるのも、取り繕うように笑われるのも、もう嫌なんだよ。
 だから、だから。


 そう、願ったけれど。
 言葉にならないその想いがガイに届くはずもなく。その唇は、また何の言葉も紡ぐことなく閉じられた。


4. 開きかけた唇は、言葉を発することなく閉じられた