野宿とは違い、落ち着いて眠れるはずの宿の寝台で、何故か深夜に目が覚めてしまって。身体は疲れを訴えてるのに、と寝返りを打ったとき、小さな声が聞こえた気がした。
 そっと上半身を起こして辺りを見渡す。また聞こえた微かな声の方向に視線を向けると、そこにはこちらに背を向けて横になっているルークがいた。
 起きているのかと呼びかけてみるが、返答はない。近寄ってその顔を覗き込んで。――― 伸ばしかけた手を止めた。

 あぁ。またか。

 髪を切って以来、ルークは頻繁に魘されるようになった。
 起きているときには口にすることさえ出来ない謝罪を、ひたすらに繰り返し。そして起きたときには、何も知らずいつもと同じように笑うのだ。

 また繰り返されるだろう明朝の光景を思うと、胸が軋む。
 誰が。一体誰がこいつを汚れてるだなんて、汚らわしいだなんて言えるんだ。何も知らなかったこいつを騙して罪の引き金を引かせた男の方が、復讐なんて理由で関係のないこいつを手にかけようとした俺の方が、よっぽど汚い人間じゃないか。殺した相手を悼んでいるこいつの方がよっぽど綺麗じゃないか。
 本人の意思と関係なく、知らず一筋零れた涙。それすらこんなに綺麗だというのに。

 月の光に照らされて、届くことのない謝罪を繰り返すその姿に。
 許しを乞えるほど軽くはない罪を抱え、助けを求められるほど愚かではなくなったこの少年の涙に濡れた頬が、細い肩がこれ以上冷えないように、と。そう願って毛布をかけ直した。


5. 零した涙すら、綺麗だ