「…………」

 背後から、視線を感じる。それどころか、たまに"あっ"とか"いやいや"なんて呟きも聞こえてくる。
 しばらく無視して鍋をかき混ぜていたルークだったが、辛抱の限界だと言わんばかりの勢いで振り向いた。


「うっせえよガイ!! どっか行けよ!!!」


 その怒声を受けて、隠れていたつもりらしいガイが、木の陰から出てきた。心持ちどころか、相当落ち込んでいるように見えるのは気の所為ではないだろう。
 かと言って、ルークにはガイに同情する気は欠片もなかった。

 そもそも、ガイは自分に甘過ぎると思うのだ。
 何でも先回りして世話を焼いて、ルークがやろうとしたことはすでにガイが済ませた後。これではいけないと思い、ティア達に言って今日の料理当番をさせてもらっているというのに、ここでもガイは何かと世話を焼こうとし。それを何とか追い払っても、先程のように物陰からこちらの様子を伺い始める始末。
 こんな状況では、項垂れる姿を見たところで申し訳ないなどと思える筈もない。


「大丈夫だって言ってんだろ! 大人しく出来るのを皆と待ってれば良いんだよ!!」
「いや、そうしてやりたいのは山々なんだけどな・・・・・」


 ちらりと視線をルークの手へと向ける。そこには戦いによるものだけではない無数の傷。うるさいと怒鳴られた自分以上に喧しく、指を切っただの火傷しただのと騒がれて放っておける訳もなく。
 どうすれば素直に手伝わせてくれるだろうか、と思いを巡らせながら落ちていた視線を上げれば、視界を黒い煙が過ぎった。
 その出所は、先程までルークが掻き混ぜていた鍋。


「な……っルーク! 後ろ! 鍋!!!」
「は? ……って……うわああぁぁ!!??」


 慌てて素手で鍋に触れて悲鳴を上げるルーク。
 その姿を見てガイは溜め息を吐き、取り敢えず火を消すべく水の入ったバケツを手にした。



(お前も料理も、大丈夫じゃないから心配なんだ!!)


1. 一人だって、大丈夫