多くの人が行き交う、商店が建ち並ぶ通りの片隅。人ごみを避け、裏路地に繋がる小道の入り口の壁に凭れて、ルークは深い溜め息を吐いた。確かめるように自分の衣服を探るが、探し物の感触は得られない。
 先程から何度も同じ行為を繰り返すが、当然のように同じ結果しか得られない事実に、ルークはもう一度溜め息を落とした。

 財布が、ない。

 もちろん財布が勝手になくなる訳はないのだから、恐らく自分がこの人込みの中で落としたのだろう。そう思って探し始めて1時間弱が経過しているが、財布は一向に見つからない。

「・・・・・・・何処で落としたんだろ・・・・・・・」

 ずるずると壁に凭れたまましゃがみこみながら呟く。当然答えなど何処からも返ってこない。
 買い物くらい自分一人で大丈夫だ、と啖呵を切って出てきた手前、このまま帰れない。いや、その前に、自分が失くしてしまった財布はパーティー共有のものだ。それを失くしてしまって帰れる訳がない。

「せめて誰か、探すの手伝ってくれねぇかなー・・・・・・」

 ぽつり、と零れた言葉。誰も聞いていないからこそ言えた言葉。
 自分の仕出かしたことで、仲間の誰かに迷惑かけることは出来ない。だからこれは、ただの弱音。誰にも聞かれては駄目で、言っては駄目なこと。なのに。


「探し物はこれか? ルーク」


 降ってきた言葉と影に視線を上げると、見慣れた優しい笑顔。差し出された右手には、失くなった筈の財布が載せられている。
 ガイ、と口の中だけで呼ぶ。きっと彼のことだ、一人宿を出たルークを心配して追いかけてきていたのだろう。そしてルークのこの状況を察知して、探してくれていたのだろう。

 あぁ、嬉しい、のに。そう伝えることが出来ない。だって頼っちゃ駄目なんだ、一人で出来なきゃ駄目なんだ。
 大丈夫にならなきゃ、駄目なんだ。

 泣き出しそうな顔を俯けて、どうにか礼だけを告げる。
 気付いているくせに何も言わず、苦笑して頭を撫でてくる手がとても優しくて。

 その手を振り払おうとして、・・・・・出来なかった。



(本当の本当は、この手を伸ばしたくて)


2. 頼る事なんて、出来ない