がたん、がたん。
 規則的に音を立てて走る列車。その向かう先は、あの焔の大佐のいる街。

「えーと…・司令部の皆に会うのも久しぶりだね」
「………………あぁ」
「皆元気かな。元気だよね、きっと」
「………………あぁ」
「最近大きな事件とか聞かないけど……忙しくないといいね、沢山話したいし」
「………………あぁ」
「……………」

 広くはない車内だ。決して大きくはない座席に鎧の身体を縮めて座っていたアルフォンスは、向かい合って座っている兄に気付かれぬよう、小さな溜息を零した。
 いや、多少大きく溜息を吐いたところで、今のこの状態では気付かないだろう。列車に乗り込んでからずっとこんな様子だ。ぼんやりと窓の外の風景を眺めたまま、何を話しかけても上の空。

 そもそも、今日この列車に乗ると言い出したのも突然だったのだ。昨夜になって、いきなりだ。
しかし、アルフォンスはこの状況の原因に心当たりがあった。そう、兄は確か、昨日誰かからの電話を受けた筈だ。


「………大佐も、元気だといいね」


 それは、先程までに比べると小さな声だったが、エドワードはびくりと肩を揺らして、慌ててこちらに向き直った。
 その顔は僅かに赤く染まっている。

「な、何で、た、大佐? いや、別に、あ、あいつがどうでも」
「どもり過ぎだよ、兄さん」

 そうすっぱりとアルフォンスが切り捨てると、今度は俯いてぼそぼそと呟き出した。この反応を見る限り、やはり昨日の電話の相手は大佐だったらしい。
 どういう訳かは分からないが、本気でこの兄に惚れているらしい彼。どうやら、まだそういう関係でないにしても、兄も満更でもないらしい。
 その事実にちょっと、ほんの少しだけ淋しいような悔しいような気持ちになって、少しからかうように言う。


「・・・・"会いたい"、とでも言われたの?」


 真っ赤になって、言葉も発せずにただ口を開閉させるエドワード。冗談だったのだが、図星だったらしい。
 意地っ張りな兄だから、こういった素直な反応を、多分まだ彼は知らないのだろう。そう思うと、何だか自分も素直な気持ちで笑えた。



(本当は自分も会いたいだなんて、言えないんだろうなぁ)


5. ちらりと覗いたきみの本音