この男は性質が悪い、と常々エドワードは思っている。例えばたまに受ける電話での話し方や、下された命令に付け加えられている余計な一言。この男がなす言動の端々にそれを感じることが出来るが、特にこの男を前にすると、その思いは強くなる。
そう、今現在も、ロイを前にしたエドワードの胸の内はその思いで埋まっていた。
差し出された手のひらとか。広げられた腕とか。その優しく細められた目元とか。緩やかに弧を描く口元とか。
それら全部にエドワードが弱いということを知っていてやっているに違いないのだ。ロイの洞察力と意地の悪さなら、それぐらいのことはやってのけるだろう。
だが、もしかしたら、と。もしかしたら、それらは自然に発露したもので、本当に純粋にエドワードとの再会を喜んでくれているのかもしれない、そう思わせてしまう雰囲気をロイは纏っているのだ。
だからますますエドワードは混乱する。促されるままにその胸に飛び込むなんて出来ない、そんなのは絶対無理だ。そう思うのに、その手を突っぱねることが出来なくなるのだ。
ふざけるな、それよりほら、報告書。
そう言って鞄から取り出した紙束を投げてやれば、この空気から逃げ出すことが出来る。それは分かっているのに、何故か出来ない。
本当はエドワードだって分かっているのだ。ロイがどういうつもりでそんなことをしているのか、自分がどうしたいのか。その自分の望みと行動を隔てているものが、単なる子供っぽい羞恥でしかないことも。
そう、結局のところ、エドワードは待っているのだ。あの柔らかい声で、そっと告げられる一言を。
それさえ告げられれば、自分が折れてやったという態度にはなるが、その温もりに触れられる。
はやく、はやく、はやく。
呪文のように繰り返す言葉。本当は今すぐにだって抱きつきたい気持ちをどうにか抑える。
距離にして5歩。その位置に立ちながら、目の前の口がゆっくりと開かれるのを待った。
(その声も全部、だいすきなんだ)
そう、今現在も、ロイを前にしたエドワードの胸の内はその思いで埋まっていた。
差し出された手のひらとか。広げられた腕とか。その優しく細められた目元とか。緩やかに弧を描く口元とか。
それら全部にエドワードが弱いということを知っていてやっているに違いないのだ。ロイの洞察力と意地の悪さなら、それぐらいのことはやってのけるだろう。
だが、もしかしたら、と。もしかしたら、それらは自然に発露したもので、本当に純粋にエドワードとの再会を喜んでくれているのかもしれない、そう思わせてしまう雰囲気をロイは纏っているのだ。
だからますますエドワードは混乱する。促されるままにその胸に飛び込むなんて出来ない、そんなのは絶対無理だ。そう思うのに、その手を突っぱねることが出来なくなるのだ。
ふざけるな、それよりほら、報告書。
そう言って鞄から取り出した紙束を投げてやれば、この空気から逃げ出すことが出来る。それは分かっているのに、何故か出来ない。
本当はエドワードだって分かっているのだ。ロイがどういうつもりでそんなことをしているのか、自分がどうしたいのか。その自分の望みと行動を隔てているものが、単なる子供っぽい羞恥でしかないことも。
そう、結局のところ、エドワードは待っているのだ。あの柔らかい声で、そっと告げられる一言を。
それさえ告げられれば、自分が折れてやったという態度にはなるが、その温もりに触れられる。
はやく、はやく、はやく。
呪文のように繰り返す言葉。本当は今すぐにだって抱きつきたい気持ちをどうにか抑える。
距離にして5歩。その位置に立ちながら、目の前の口がゆっくりと開かれるのを待った。
(その声も全部、だいすきなんだ)
1. おいで
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