大体、彼は嘘を吐くのが下手だとロイは思う。
 軍属の人間として、錬金術師としての駆け引きを行うのはあんなにも鮮やかにしてみせるというのに、エドワード・エルリック個人として嘘を吐くのは出来ない。それは彼の幼く澄んだ心根を示しているかのようだ。

 だが、明らかに嘘だと分かっている嘘に付き合うことは、もう出来ない。

 あれだけ視線で追いかけてきておいて。なのに目が合えば視線を外して。嫉妬を隠しきれないでいて。
 恋愛に関して百戦錬磨のロイが、それでエドワードの気持ちに気付かない訳がない。

 とはいえ、エドワードとロイの性別や年齢差を考えれば、エドワードの気持ちがロイの想像通りだという保証はない。そうでなくても、こういったことに疎いエドワードのことだから、彼自身が無意識で自覚していない可能性もある。
 それは分かっているし、一回り以上も大人である自分は、どちらにせよ彼の気持ちが追い付くのを待つべきだとも思っている。
 しかし、もう待てない自分がいるのも確かなのだ。だから、今回こそは、いつも冗談めかして誤魔化していた問いに対するエドワードの心からの返答を貰おうと決めた。


「君は、私が好きだろう?」


 いつものように真っ赤になった彼が否定しようとするのをそっと遮る。彼が他の人間に奪われてしまうリスクを考えれば、もう逃がしてあげることは出来ない。

 彼にしか見せない優しい笑みを浮かべて、その耳元でそっと囁く。
 エドワードの赤い頬が更に赤くなるのを見て、自分の推測が当たっていたことを確信して安堵の息を吐いた。



(いい加減、覚悟を決めてくれ)


1. ……嫌いだなんて言わせない