宿屋の一室のドアに手を伸ばしかけて、また下ろす。
 先程から30分以上も同じ行動を繰り返している自分が情けなくなって、ルークは深く溜め息を吐いた。

 何も躊躇うことはない。軽くノックして、出てきたガイに一言告げて誘えば良いだけだ。きっとガイは喜んでくれるだろうし、断ってくることはないだろう。
 なのに、何故出来ないのか。その理由すら分からなくなって混乱してきたルークは、やっぱり諦めて自分に宛がわれた部屋へ戻ろうかと一歩後ずさる。だが、自分には目的があってきたのだ。留守を確かめた訳でもないのに引くことは出来ない、と思い留まる。

 ルークの目的は、ガイを喜ばせることだ。
 いつもルークはガイに助けられてばかりだ。戦闘でも、旅の生活でも。そして恋人としても、ルークはガイのリードに頼りっきりだと自覚している。本当はルークだってガイのために何かしたいのだ。喜ばせて、笑って欲しい。だから、たまには自分から行動を起こしてみようと思った。自分から誘ってみようと思った。
 ……とはいえ、思っただけで、未だに行動に移せてはいないのだが。

 何だか落ち込んできて、二度目の溜め息を吐く。と、同時に目の前のドアが開いた。
 そこから覗くのは、焦がれていた人の姿。恐らく気配でルークがずっとここにいたことなど気付いていたのだろう。痺れを切らせて出てきただろうガイの表情は苦笑だった。


「どうかしたのか?」


 ルークを見て全てを察した様子のガイは、柔らかく問いかける。あぁ、やっぱり相手の方が何枚も上手だ。
 悔しい想いを隠しながら、せめてもの仕返しとして、笑顔で準備していた台詞を口にした。



(君の笑顔が見たいんだ)


4. デートのお誘いに来たんだけど?