自分だけが特別なのではないのだと、知っている。

 おっさんは、一見すると、……いや、多少知った程度では、本当にただのうさんくさいおっさんだ。ふざけた態度だし、馬鹿なことばかり口にする。パーティーメンバーの女性陣に冷たい視線や制裁を喰らうことだって度々ある上、博愛主義の称号が示す通りの女好きの駄目な大人だ。
 それでも、おっさんほど気遣いの上手い人を俺は知らない。決して押し付けることはなく、気が付いたらその優しさを受け取ってしまっていた、そんな感じだ。ユニオンや騎士団の連中のおっさんへの態度を見ていれば、どれだけ面倒見がいいかなんて充分過ぎるほど伝わってくる。

 だからこそ、自分に向けられる気遣いや優しさも、決して特別ではないのだと思い知らされる。何かと自分に差しだされる手は、他の誰かにも当然のように与えられているものだ。手にする温かさに、秘めたままの想いが揺り起こされて胸を軋ませたところで、それはこちらからの一方通行に過ぎないのだ。
 おっさんが俺を選ぶことも、そもそもそういった対象になることすらないことは痛いほどに分かっている。いくら女顔だと言われようと、自分よりも背が高い、れっきとした男に手を出そうなんて考える訳がない。
 命を、預けてもらえているのだ。これ以上、何を望むというのか。何を、望めるというのか。

 浅ましい嫉妬で暗く澱んだ感情が膨れ上がっていくが、それに無理矢理蓋をする。呑まれてはいけない。独占したいなんて、不可能なことを夢見てしまってはいけないんだ。それに気付かれてしまったら、もうこんな関係すらなくなってしまう。
 あぁ、いっそ、どうしようもなく届かないものなら良かった。欠片も手に入らないものなら、良かったんだ。



(その僅かなものを貪欲に求めてしまう)


1. 優しくしないで