あぁ、もう。何だってこいつは、いつまでたっても空気ってもんが読めないままなんだ、ちくしょう。
 こっちはもう、子供じゃないんだ。お前に対する感情だって、あの頃のままじゃない。あんな、ただ"大好き"だけの純粋なものじゃなくなってしまっているんだ。愛しいとか幸せだとかの綺麗な部分が薄れた訳じゃない。それでも、嫉妬とか独占欲だとか、そんな醜い感情ばかりが強くなってしまったんだ。
 自分じゃ、もう処理できないほどだ。ぐるぐると渦巻くものを抱えたまま、どうすることも出来なくて途方に暮れるしかない。

 それを気付かれたくなくて、ただひたすら押し殺して、なかったことにしようと努力しているっていうのに。スペインの馬鹿はあの頃からずっと変わらないまま、好きやだのかわええだのと締まりのない笑顔で叫んでくる。あれは告げる、なんてもんじゃない。叫ぶ、だ。軽く暴力だ。
 スペインにしてみれば、俺はあの頃のままの可愛い弟分で、それらの言葉だって幼い子供に対する愛情表現の名残なんだろう。その言葉を聞く度に、俺が泣きたいほど嬉しくなったり、消えたいほど絶望したりしているなんて考えもしないから、だから平気で挨拶のように口にしているんだ。

 分かってる、その言葉には隠されたものも深い意味もないことは。あの単純馬鹿のスペインが、そんな遠回しなことする訳がない。だから、"好き"なんて言葉を真に受けたら馬鹿を見るのは自分だ。
 それなのに、もしかしたら、なんて夢を見てしまうくらいには俺も馬鹿で。もし告げても、嬉しそうに笑って受け入れてくれるんじゃないか、なんて。もはやただの妄想だ。

 なあ、スペイン。いつも強がっているだけで、俺が本当は臆病だなんてことは、お前は誰より知っている筈だろ。傷付くのが怖いってこと、知っているだろ。
 だったら、もうそんなこと言わないでくれ。特別な振りをしないでくれ。他の奴らと同じように扱ってくれ。この感情が膨れ上がって溢れてしまう前に、全部が有り得ない妄想だったのだと、そう諦めさせてくれ。



(感情が、決壊してしまう)


5. 期待させないで