別に、その言葉を疑った訳じゃない。
 ただ、……そう、気になったんだ。
青春プロパガンダ
「俺、弥子ちゃんが俺を好きっていうのが不思議なんだけど」


 ふと思った、なんて感じを装って、自分の隣に座る彼女に訊いてみる。
 ―――― あ、驚いてる。そうだよな。確か、さっきまで学食のカツカレーについて語ってた筈だ。"ふと思った"にしても、話題が唐突過ぎた。

 困らせたかった訳じゃないし、どう誤魔化そうかなと考える頭の片隅で。やっぱり、思ってしまう。

 俺は、彼女に何もしてやれない。
 父親を殺した犯人を捕まえてもあげられなかったし、立場上、いつも傍にいることも出来ない。彼女は俺よりずっと年下で、出会いだってこれから沢山あるだろう。
 なのに、何で。笑って、俺の隣にいて。俺を好き、なんて言うんだろう。

「あははははっ」
「………弥子ちゃん?」

 突然笑い出した彼女に、今度はこっちが面食らう。何か変なこと言ったっけ、俺。
 怪訝な視線を向ける俺に、彼女はごめんなさい、と目尻の涙を拭いながら。やっぱり、いつもの笑顔で言った。

「私からすれば、笹塚さんが私を好き、っていう方が不思議ですよ」

 彼女の告げた台詞は、問いの答えではなかったけれど。
 何故だか、問いそのものをどうでも良いようなものにしてしまって。とても、些細なことのように感じさせられてしまって。

「………そう」

 敵わないな、と思いながらも、少しだけ悔しかったから、きちんと整えてある彼女の髪を掻き乱す。
 色素の薄い柔らかい髪の手触りが心地好くて、手を離せないでいたら、いつの間にか彼女の髪型はぐしゃぐしゃに崩れていた。

「何するんですか!!!」

 むくれて睨んでくる彼女に、そっと笑みを返す。
 弥子ちゃんがいつも、自分と会うときは頑張って髪の毛をセットしてきてくれていることを、俺はちゃんと知っている。他にも色々、彼女が頑張ってくれていることを、知っている。

 だから、俺と彼女の間で、多分細かいことは何も関係がないんだ。ただ、好きだから好き、で良いんだろうな。





笹塚←弥子に見せかけて笹塚×弥子という話(ぇ)。無理矢理短くしようとしたら支離滅裂……というか恥ずかしい話に。
てかアレだっけ。笹塚さんて笑っちゃいけないんだっけ(曖昧)。