勘違いの夢
青い空に白い雲。人気のない平日の公園のベンチに二人きり。
――― 別れた日から約一年。
その間に何度か顔を合わせることはあっても、こうやって二人きりというシチュエーションは一度もなかった。だから突然訪れたこの状況に、どう対応したら良いのか分からない。
仕方なくだんまりを決め込んでいると、相手の方から話しかけてきた。
「あー……その、なんだ。どうなんだ、最近」
「……は」
なんだそれ。お前は思春期の息子に会話を試みるお父さんですか。
思わず突っ込もうとして思い留まる。自分は突っ込み向きではないし、何よりこいつのことだ、俺以上に悩んだ末の言葉だろう。こいつのヘタレ加減といったら、他の追随を許さない。そんな男がこんな状況でかける言葉に悩まなかった筈がない。
そう思うと何だか急に気が楽になって、重かった筈の口が動くようになった。
「どうもこうもねーよ、相変わらず銀さんは貧乏の糖尿持ちだっての。貧乏暇無しとか言うけどアレ嘘だよね、暇だから貧乏なんだよね」
そう普段のノリで告げると、土方の目が懐かしそうに細められた。
……なんだ、よ。なんだその反応は。
波紋のように広がっていく動揺を掻き消すように、お前は?なんて話を振ってみる。我ながら不自然な態度だと思ったが、土方はそれに何の反応もすることなく、別に、とそっけない答えを返してきた。
本当に何もないのだろうと思えるその様子に、数日前に聞かされた言葉が蘇る。
(土方さん、旦那と別れて以来、ずっとフリーのままですぜィ)
土方と同じ隊服に身を包んだ、まだ少年といえる年頃の彼は言った。
まさか、と思っていたのに。思っていたというのに。
再び黙り込んで煙草をふかしている、隣に座る男の横顔を盗み見る。
もしかして、だなんて。大それた夢を見てしまいそうになる自分を心の中だけで嘲笑った。
(もしかして)
(まだ)
(俺のことを、)
土銀のキューピット役は沖田が務めますが、土方のためではない気がします。