冬空の下で
「遅ェ」開口一番に土方に向けられたのは、そんな可愛げのない言葉だった。
いや、こんないい年したマダオに可愛げなんてそうそうあってたまるか、と思い直す。大体この男―――銀時は土方に対するときは、他の人間に対しているときの何倍も意地を張るというか、我儘というか、とにかく可愛げがないのだ。
そんな相手だからこそ、約束の時間から1時間も経っている今、こんな寒空の下でまだ待ち合わせ場所にいるとは思っていなかった。遅れた理由は仕事という至極まっとうなものであれど、連絡を入れることも出来なかったのだ。しかもこれが初めてという訳でもないのだから、またかと諦めて、……いや、呆れて帰ってしまったと思っていた。
にも関わらず足を向けてしまったのは、もしかしたらなどという淡い期待が土方にあったからではあったが。
「……何でまだ待ってんだ」
「ハアァァ!!??」
うっかり思ったことが口から滑り出ていたらしい。気まぐれか、はたまた何か企みでもあるのかという純粋な疑問だったのだが、どうやら銀時は馬鹿にでもされたと受け取ったらしい。いつもの見下したような笑顔を作り、土方に向かって鼻で笑ってみせる。
「ちょ、なに勘違いしてんのお前。べっつに銀さんは、お前のことなんて待ってませんー。たまたまこの時間にここを通りがかっただけで、お前との約束なんて忘れてたんですー」
じゃあ最初の"遅ェ"ってのは何なんだとは思ったが、それを議論するにはここは寒過ぎる。溜息を一つ吐いて、取り敢えずいつもの飲み屋へと歩き出す。
だが、文句を垂れながらもついてくると思った足音はない。振り返ってみると、銀時は先程の位置から全く動いてなかった。まさかガキみたいな拗ね方してんのかと訝しんでいると、あー……、と困ったような声が返される。
「いつものとこだろ? 銀さん後から行くからよ、先行ってろよ」
「はぁ? なんでだよ、さっさと行くぞ」
不可解なことを言う銀時に痺れを切らせて乱暴にその手を掴むと、ぎくりとするほどその肌は冷え切っていた。銀時はばつの悪そうな顔をして視線を逸らす。大方、先程の言葉が嘘だと見破られないよう、コンビニかどこかで暖をとってから合流するつもりだったのだろう。
(あぁ、本当にこいつは)
可愛げなんて言葉からは対極にいるようないるような態度ばかりのくせに、たまにこんなことをしでかしてくる銀時に、こんなどうしようもない気持ちになるときがある。そしてそれを嫌だとも困ったとも思っていない土方自身が問題だ。それでも、それでいいかと思わせてしまう破壊力をこんなときの銀時は持っているのだ。
何事もなかったかのように手を掴んだまま歩き出せば、思い出したように土方に罵声を浴びせてくる。それがなんだか照れ隠しのように聞こえてしまう自分は、きっと末期なのだろう。
(待っててくれて嬉しいなんて言ってやらない)
最近唐突に寒くて堪らなくて死にそうなので逃避文。
タイトルセンスってどうやったら会得出来ますか……!
タイトルセンスってどうやったら会得出来ますか……!