ルーク独白
 そんなこと、考えもしなかった。

 アクゼリュスが崩落して、大勢の人が死んで。
 俺の所為だ、俺が馬鹿だったから、俺が……何も、分かってなかったから。

 そう思ったから、俺は変わりたいと思った。変わらなきゃ、って思った。

 変わろう、とそればかりで。変えることで、何が失われるのか考えもしなかった。
 変わってしまうのがこんなに怖いなんて、考えもしなかった。


 前より傷の増えた手。血に塗れた手。
 この手から、零れ落ちていったもの。


 髪を切り、旅をしていたときは、変われないことが怖かった。
 でも今は。

 変わるということが、こんなにも怖くて堪らない。
ネタメモ過ぎて意味不明です。
アブソーブゲート後に邸に戻ったルークの周りには、ティア達どころかガイまでいなくなって。変わったことで手に入れられたものもあるけれど、そのために失ってしまったものもあるのだと気付いてぐるぐるしてる話?
ガイルク
 ひとりに、なりたいんだ。

 なりたくない、本当は誰かにいて欲しい、傍にいて欲しい。優しくして欲しいし、慰めて欲しいし、大好きだよって囁いて欲しい。
 でも、それは俺には許されないこと。望んではいけないことだと分かっているから。

 だから、ひとりにして欲しいんだ。
 ガイは俺の欲しいものを全部持っていて、それを惜しみなく俺に与えてくれるから。望んでいるものを差し出されて、それを振り払える程には強くなれない。


 なのに、なんで。
 隠してるのに、他の誰も気付いてないのに、ガイだけは気付いてしまうんだ。なんで、なんで、ガイだけは。
 こんなとき、ひとりになりたいとき、必ずガイは気付いて傍に居てくれる。優しくして慰めて、大好きだよって囁いてくれる。

 やめてくれ、俺は苦しまなきゃいけないんだ、赦されちゃいけないんだ。

 そう思っているのに言葉にはならず、ただその温かさに縋って涙を流した。
僕をひとりにしてくれない神様
(今日も、きみに救われてしまう)
縋るように泣くのは萌であると主張。

title by 確かに恋だった

ガイルク
 ひとりになりたいのだと、知っている。
 でも、本当は誰かにいて欲しいと思ってることも知っているんだ。


 苦しまなきゃいけない、なんて。赦されちゃいけない、なんて。そんなのは、お前の勝手な思い込みだ。誰もお前にそんなものを課してないし、責めてもいない。世界の為に命を懸けて頑張ってるお前に、そんなこと出来る訳ない。
 だからお前は笑ってて良いんだ。望んでも良いんだ。

 そう、言葉にして伝えられたら良いのに、出来ない。
 ルークはそんな言葉を望んでいない。告げたところで困らせるだけだ。


 だから、俺はルークの傍にいる。正しいのかは分からないけれど、泣くルークの傍にいる。
 本当はひとりにしてやる方が優しさなのかもしれないし、気付かない振りをする方がルークの為なのかもしれない。
 それでもそれをしないのは、俺のエゴだ。ルークをひとりで泣かせたくないんだ。ましてや、他の誰かのところでなんて。
 ただ、こいつの笑顔だけを願ってるはずなのに。何で、こんなことを思ってしまうのか。

 あぁ、そうだ。
 こうして縋ってくる熱に救われているのは、俺の方なんだ。
一人にして欲しいと言う人を一人にしてあげられるほど、優しくはない
(そしてどうか、一番にその笑顔をみせて)
前のと対になる感じで。方向は真逆だけど似た思考の二人。

title by 確かに恋だった

ルク逆行パロ
 光に包まれて、その目を潰すような白さに同化していく。自分がルークという個ではなく、ただの音素に還っていくかのような感覚に、きつく目を閉じる。
 こうなるだろうことは予測していたし、覚悟もしていたつもりだった。だが、いざその場に立たされれば、自身の中に溢れるのは"消えたくない"という想いだけだった。

 いやだ、いやだ、消えたくない。もういちど彼らに会いたい、誰より大切なあいつと一緒にいたいんだ。
 許される願いではなく、それが無理であることも理解している。それでも戻りたいんだ。

 その切なる願いだけを繰り返す胸の内。そればかりに気を取られていた所為か、身体の感覚が戻っていることに気付くのが遅れた。何処か、柔らかい場所に横たわっているかのような感触。
 恐る恐る閉じていた目を開けば、視界に映るのは天井。視線を巡らせれば、そこは見覚えのある部屋だった。

「……ユリアシティ…の……ティアの、部屋?」

 多少掠れはしたが、ちゃんと声が出た事実に少し安堵する。どうやら自分は"生きて"いるらしい。そうと分かれば、まずは状況を確認しなければ、と飛び起きて――ぎくりと身を竦ませる。
 さらりと流れた見覚えのある朱く長い髪。随分と前に切り落とし、最後の瞬間も自分の髪は短かったはずだ。慌てて鏡に飛び付けば、そこには髪が伸びてはいるものの、見慣れた服を着た自分がいた。

「……まさか、もうあの日から何年も経ってるの、か?」

 誰か、誰かこの状況を説明してくれ。
 俺は、世界は、皆は、どうなったんだ!!

 混乱の極地にいるルークの耳に、微かな音が届く。
 聞こえた歌声に縋るように扉をくぐれば、セレニアの花の中で歌う少女の姿があった。その記憶の中と変わらない姿に泣きそうになる。

「……っ…ティア!!」

 叫ぶように名を呼べば、彼女の視線はこちらに向けられたが――それに何か突き放すようなものを感じて駆け出しかけた足を止めた。
 そんな不審なルークを気にも止めないティアに違和感が沸き起こるが、それを上手く言葉にすることが出来ない。

「……今…どう、なってるんだ」

 どうにか搾り出した声は震えている。だが叱咤や心配の言葉はなく、ただ淡々とティアは答えた。

「皆、アッシュと一緒に行ったわ。兄さんを、止めるために。……私だけ調べたいことがあったから残ったの」

 頭を、何かで殴られたようだった。
 これ、これは、まるで、あのときのようではないか。どういうことなんだ、これは、まさか。


「……あなたはどうするの。また"関係ない"と言って逃げ出すのかしら」


 ――決定的だった。

 ようやく自分の置かれた状況を、ルークは理解した。
 あの最後の日から時間なんて全く経ってはいない。逆、だ。

(時間、が……"戻って"る……!!)

 "今"は、恐らくアクゼリュスの崩落後。アッシュの中から世界を見て、通信を切断されて自分の中に戻ってきたところなのだ。
 それならティアのこの態度も納得がいく。この彼女にとって、ルークはアクゼリュスを崩落させておきながら罪から逃げ出した人間なのだ。

(……また、あんなことを繰り返してこいっていうのか!?)

 あんな、何度も目の前で人が死ぬのを見なければならないのか。――それも自分の所為で!!

 そう胸の中で慟哭して、ふと気付いた。
 自分は全てを知っている。世界が瀕している状況も、それを救う手立ても。……そして、その所為で誰が死ぬかも。

(なら、なら、救えるかもしれない)

 犠牲になった全員は無理でも、何人かは救うことができるかもしれない。悲劇の中のいくつ かでも減らせるかもしれない。緊張の余り両の手のひらが湿っている。
そう、これは償いだ。もっと多くの人間を救わなければならないのだ。


 ――たとえ、一人であっても。


 時間はない。だが、自分と世界の置かれている状況が容易に受け入れられるものではないことも分かっている。ならば、誰の協力が得られなくても、一人でもやらなければならない。

 最後に見た仲間達の姿を思い浮かべ、――両手を握り締めた。
昨日までが、幸せでした
(あの場所に戻れないとしても、違う道を)
最近逆行パロがブームです(笑顔)。ていうか長いなこれ。
ルク逆行パロ続き ガイルク
 身体が軽くなったかのような感覚の後にゆっくりと目を開ければ、そこはもうユリアシティの一角ではなく、陽光降り注ぐ外殻大地だった。
 アラミス湧水洞―――現時点で、唯一魔界と外殻大地が繋がる場所。
 記憶の中の過去とは違い、たった一人でその場所に立ったルークは、太陽の眩しさに目を細めた。


 結局、ルークはティアに何も話すことは出来なかった。己の状況も、世界の危機も。
 言えば彼女を兄との戦いの最前線に立たせることになってしまう。表にはあまり出さなかったが、確かに苦悩していた彼女の姿をルークは憶えている。拒絶される可能性に対する恐怖も勿論あったが、彼女を案じる気持ちもまた嘘ではなかった。

 外殻大地を降下させるにはユリアの血縁者であるティアの協力が不可欠なのだが、そのことは追々考えようと決め、ルークは一人でユリアロードを通った。


 まずは囚われているイオンとナタリアの救出だろうか。いや、それはジェイド達に任せて、自分は戦争回避のためにバチカルへ向かうべきだろうか。

 魔物の気配を警戒して歩を進めながらも、最善を求めて思考する。誰も答えなど教えてはくれないし、知恵を借りることすら出来ない。自分で考え、最善を選び取らねばならない。
 自分の選択が世界を左右する、その重責を抱えながらも歩みを止めないルークの意識の底が、魔物ではない、よく見知った気配を察知した。知らず、翡翠の瞳が涙に揺らめく。
 あぁ、そうだ。アラミス湧水洞、ここは―――


「遅かったな、待ちくたびれたぜ」


 耳に馴染んだ声に、ルークは反射的に顔を上げた。あの最後の日、光の中で音素に還りながら、会いたいと願った彼が目の前にいる。

「………ガ、イ…」

 震える、声。
 会いたかった、会いたかった、会いたかった!!
 そう叫び出したいのをどうにか堪える。"この"ガイは"あの"ガイではないのだ。

 それでもあふれ出す感情は止まらない。
 それ程にルークはガイに会いたかったのだ。その笑顔を見たかったのだ―――


(ガ、イの、えが…お?)


 そのフレーズに、浮かれていた心に冷水を浴びせられたような気がした。
 あんなにも望んだ彼の笑顔が此処にある。だが、その屈託のない笑顔に重なるのは、ルークが最後に見た彼の表情。

 己の無力さを嘆き、自身を襲う痛みに耐えている、泣いているかのような――笑顔。


 ―――いやだ。


 喜びと絶望の落差の後、ルークの中に残ったのはその言葉だけだった。
 ガイがあんなふうに笑うのはいやだ。泣くのはいやだ。世界が救われた後は、ガイには心から笑っていて欲しいんだ。あれじゃあきっと笑ってくれない。どう行動したところで恐らく自分が消えるのは回避出来ないのに、それじゃあ駄目なんだ。ガイにあんな想いをさせては駄目なんだ。
 ……"ルーク"を、許させては駄目なんだ。


「……俺を見捨てた奴が、こんなところで何してるんだよ」

 低い声が、水音に混じって洞窟内に響いた。
 表情が削げ落ちたルークと対照的に、ガイは動揺を露にする。そんなガイを冷たく見やってルークは嘲笑った。

「俺は俺で、好きにやらせてもらうぜ。お前らとまた行動するなんて御免だ」
「ルーク、俺は」
「俺はレプリカで偽者だから、お前も俺についてくる義務なんてなくなっただろ。俺も、――お前なんか、必要ない」


 最後の一言に息をのんだガイの横を、ルークは通り過ぎる。そのまま出口へと進んで行くが、ガイが追いかけて来る様子はない。
 その気配が遠のくに従って、頬を涙が濡らしたが、拭うことはしなかった。泣くのは、恐らくこれが最後になるだろうから、思い切り泣こうと思った。

 世界を救おうと思うのならば、ルークはガイに助力を乞うべきだった。彼ならば、半信半疑ながらもルークの力になってくれただろう。
 そうせずにガイを突き放したのは、ただのわがままだった。世界の為に己の全てを捧げる決心をしたルークの、たった一つのわがままだった。

 何を差し置いても守りたかったのだ。
 例え、それが彼自身の意思を違えていたとしても。

 ――例え、それが世界と引き換えになったとしても。
きみに、嫌われてしまってもいい
(きみのしあわせのためなら、それでいい)
詰め込み過ぎな展開ですみませ……!
ガイの幸せを思って突き放すルクを書きたいが為にアクゼリュス後逆行にしたのですが、これだとジェイドやアニスと和解出来ない可能性が高いことに気が付いた(遅)。

title by 確かに恋だった