赤ん坊同然だったおまえを育てたのは、俺で。
いつだって、誰より傍に居て。
「…俺が……やります。瘴気を中和します」
だから。手を伸ばせば、いつだって触れられると勘違いしていたんだ。
ローレライ教総本山、ダアト。その中心である教会。礼拝堂などと違い、教会としての厳かさというよりは王城のような重厚さを湛えた扉を見上げる。
そういった風に感じてしまうのは、この宗教組織の内情を知ってしまった所為であり、巡礼に訪れる信者の目には恐れ多いもののように見えるのだろうか、なんて取り留めのない事を考える。
そうやっていつもと同じようにしていれば、さっきまでの出来事がなかったことになるとでも思ったのか。
いや、そう思いたかったのかもしれない。なかったことにしたかったのかもしれない。
「……ガイ」
躊躇うように呼びかけられて。
振り向いた先にいた少年の、その困ったような笑顔に。
世界が瀕している状況も、その為にこいつが下した決断も、……全てが現実なのだと思い知る。
「俺は、認めないぞ」
引き止めたくて。行かせたくなくて。
今までは、どうすればルークを宥められるかなんて考えるまでもなく分かっていたのに。今は何も思い浮かばなくて。
声が震えないように強い口調で、そう言うのが精一杯だった。
「ガイ……」
また、困ったように微笑う。
違うだろ、本当に泣きたいのはおまえで、そんなおまえに俺は怒っているんだろ。
「まだおまえは7年しか生きてないんだ!!」
なのに何で。
泣きそうなのが俺で、おまえは微笑ってるんだよ。
「石にしがみついてでも生きることを考えろ!!!」
微笑うな、微笑うな、微笑うな。頼むから、そんな風に微笑ったりしないでくれ。何で微笑うんだよ。おまえを犠牲にして得られる世界にどんな価値がある。
本当は死にたくないくせに。逃げ出したくて堪らないくせに。
そう、叫べばいいんだ。嫌だって。怖いって。死にたくないって。・・・・・助けてって。
そうやっておまえが泣けば、俺は今すぐにでもおまえを連れて逃げてやるから。世界中を敵に回したって、おまえを渡したりしないから。
「……だけど、瘴気はどうにもならないだろ」
ぽつり、と呟かれたその一言が、ルークの悲愴なまでの覚悟を表していて。
もう、俺の言葉はルークに届かないことを知った。
俺にルークを引き止めることは出来ないことを知った。
「それでも……俺は、おまえに生きていて欲しいよ」
思わず零れた自分の呟きが、思った以上に泣きそうな声で。
そんな俺の様子に、ルークが少しだけ苦しそうな表情をする。
「誰が、なんて言っても」
おまえが、そう決めたとしても。それを望んだとしても。
それが、引き止められないことを知った俺の、唯一つの願い。
「ありがとう……。でも、もう、決めたんだ。怖いけど……だけど、決めたんだ」
向けられた微笑みは、その願いすら拒否していて。
いつだって、伸ばせばおまえに届くはずだった手は、その穏やかな笑顔によって静かに振り払われた。
いつだって、誰より傍に居て。
「…俺が……やります。瘴気を中和します」
だから。手を伸ばせば、いつだって触れられると勘違いしていたんだ。
ローレライ教総本山、ダアト。その中心である教会。礼拝堂などと違い、教会としての厳かさというよりは王城のような重厚さを湛えた扉を見上げる。
そういった風に感じてしまうのは、この宗教組織の内情を知ってしまった所為であり、巡礼に訪れる信者の目には恐れ多いもののように見えるのだろうか、なんて取り留めのない事を考える。
そうやっていつもと同じようにしていれば、さっきまでの出来事がなかったことになるとでも思ったのか。
いや、そう思いたかったのかもしれない。なかったことにしたかったのかもしれない。
「……ガイ」
躊躇うように呼びかけられて。
振り向いた先にいた少年の、その困ったような笑顔に。
世界が瀕している状況も、その為にこいつが下した決断も、……全てが現実なのだと思い知る。
「俺は、認めないぞ」
引き止めたくて。行かせたくなくて。
今までは、どうすればルークを宥められるかなんて考えるまでもなく分かっていたのに。今は何も思い浮かばなくて。
声が震えないように強い口調で、そう言うのが精一杯だった。
「ガイ……」
また、困ったように微笑う。
違うだろ、本当に泣きたいのはおまえで、そんなおまえに俺は怒っているんだろ。
「まだおまえは7年しか生きてないんだ!!」
なのに何で。
泣きそうなのが俺で、おまえは微笑ってるんだよ。
「石にしがみついてでも生きることを考えろ!!!」
微笑うな、微笑うな、微笑うな。頼むから、そんな風に微笑ったりしないでくれ。何で微笑うんだよ。おまえを犠牲にして得られる世界にどんな価値がある。
本当は死にたくないくせに。逃げ出したくて堪らないくせに。
そう、叫べばいいんだ。嫌だって。怖いって。死にたくないって。・・・・・助けてって。
そうやっておまえが泣けば、俺は今すぐにでもおまえを連れて逃げてやるから。世界中を敵に回したって、おまえを渡したりしないから。
「……だけど、瘴気はどうにもならないだろ」
ぽつり、と呟かれたその一言が、ルークの悲愴なまでの覚悟を表していて。
もう、俺の言葉はルークに届かないことを知った。
俺にルークを引き止めることは出来ないことを知った。
「それでも……俺は、おまえに生きていて欲しいよ」
思わず零れた自分の呟きが、思った以上に泣きそうな声で。
そんな俺の様子に、ルークが少しだけ苦しそうな表情をする。
「誰が、なんて言っても」
おまえが、そう決めたとしても。それを望んだとしても。
それが、引き止められないことを知った俺の、唯一つの願い。
「ありがとう……。でも、もう、決めたんだ。怖いけど……だけど、決めたんだ」
向けられた微笑みは、その願いすら拒否していて。
いつだって、伸ばせばおまえに届くはずだった手は、その穏やかな笑顔によって静かに振り払われた。
4. 手が届く筈だった
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