あれは、何の折のことだったか。それはもう思い出せぬが。
 今も記憶に残る、逆光で表情が窺えぬお前と。

 未だ失くならぬ、この胸の軋み。
なによりも、不確かな
「なぁ佐助、お主はどの季節が一番好きだ?」

 その質問自体には、特に意味があった訳ではない。何故したのかと問われれば、「何となく」としか言い様がない。多分、話の流れでしかなかっただろう。
 その問いに、佐助はいつもと変わらぬ様子で答えた。

「旦那の好きな季節」

 その答えになっていない答えに、何だかはぐらかされている様な気分になって。今よりまだ幼かった自分は、俺ではない、お主の好きな季節を訊いているのだと重ねて詰め寄った。

 ちゃんと教えて欲しかった。佐助の好きなものを。嫌いなものを。
 佐助から、教えて欲しかった。

 でも、そんな自分に、佐助は曖昧に笑うだけで。それが、また誤魔化されているようで。どうしようもなくて、悔しくて、泣き出した。
 それをただ黙ってあやしてくれた記憶の中の佐助は、逆光と涙の所為でどんな表情だったのか分からない。

 なぁ、佐助。
 そのときのお前は、どんな表情をしていた?


 ふ、と意識が浮上する。
 起き上がって辺りを見回せば、いつも通りの自分の居室。どうやら転寝をしてしまっていたらしい。何だか動く気になれずに、そのまま呆けていると。


「何ぼんやりしてんの、旦那」


 笑い混じりの、よく知った声。振り向くと、夢の中より幾分大人びた佐助が立っていた。
 当たり前だ、これは何年も前の記憶だ。あれから何年も、共に過ごしてきた。

「……あれ、なに、本当にどうかしたの」

 ただ黙って佐助を見上げる自分を、怪訝そうに覗き込む。悪いものでも食ったかな、と呟くその顔は、とてもよく知ったもので。
 だから、だから。今なら、と。もう一度、その質問を投げかける。

「……佐助、お主の一番好きな季節は何だ?」

 唐突な質問に、へ?と呆気に取られたような反応を示しつつも。
 それでも、佐助は答えた。

「旦那の好きな季節、だよ」

 記憶と変わらぬ、笑顔。
 ……何も、変わらぬ。


「……そう、か」

 ずっと一緒にいて。傍にいて。笑って。
 佐助の事だって、あの頃よりいっぱい知っていると思っていた。佐助だって、俺のことを何でもお見通し、という顔をしている。

 でも。

 こんなとき、"もしかしたら"、と。
 "もしかしたら、俺は佐助のことを何一つ知らないのではないか"、と。そう、不安になることを。胸が軋んで泣きたくなることを。
 きっと、――――― 知らない。





すみません何が言いたいのかよく分からない話になりましたゲフンゲフン。
佐助の笑顔に不安になる幸村がやりたかっただけのような(うろ覚え)。
佐助は誤魔化しでなく本気で言ってると思います。別に自分はどの季節でも良くって、幸村が楽しそうにしている季節が一番だよね、っていう!(妄想)