花に水をやる。枯れぬように、散らぬように、失わぬように。
 そんなことをしたところで、時をとめられぬと承知しているのに。
花が散る
 別れは、一瞬だった。

 戦場で敵に背後を取られ、あ、と思った瞬間。憶えのある温かさに包まれ、訳の分からぬまま爆風に吹き飛ばされた。
 地に倒れこみ、敵は爆弾兵か忍だったのか、と考えを巡らせる。自身を抱き締めたまま動かぬ忍を不審に思い、その名を呼んだ。答えがないことに漸く焦りを感じてその身体に手を回せば、ぬるりとよく知った感触に身を竦ませた。

 震える声でもう一度その名を呼んだら、今度はゆっくりと顔を上げて。
 笑って。
 そして。

 そのまま事切れた。


 いつか、こんな日が来るかもしれないとは思っていた。でも、想像していたものは、こんな呆気ないものではなかった。
 多分佐助はすまないと謝るだろう。もう守れなくてすまない、と。だから自分は佐助が安らかに眠れるように、笑ってやらねばならない。あぁ、そんなことはやはり出来ず、童のように泣き喚くかもしれない。置いていくな、と駄々を捏ねて困らせてしまうかもしれない。
 それでも、最後にはちゃんと言うのだ。ずっとお前のことは忘れぬ、と。誰よりもお前のことを大切に思っていた、と。それはこれからも変わらぬ、と。

 それが実際は、何も言えなかった。一言だって告げる暇はなかった。ただ一瞬で全てが終わってしまった。こんなに長く一緒に居たというのに。ほんの、一瞬で。
 あまりに呆気なさ過ぎて、泣くことも出来なかった。ただただ呆然とするばかりで。涙の一粒も零れてこなかった。
 だって、それほど佐助を失った空洞は大きかったんだ。何も考えられなくなるくらいに、佐助の存在が自分の中を占めていたんだ。
 何をしていても、失った自分の半身を思い出してしまうくらいに。


 もう届かないのだ。この手も、この声も。
 たったそれだけを認めるのに、どれだけ時間をかけただろう。無意識に佐助を求めて、何度も絶望して。そうしてやっと分かったのだ。

 もう、佐助は何処にもいなくて。
 佐助と同じ存在も、その代わりになる存在もいないのだと。

 だから、忘れるしかないと、思った。忘れた振りをして生きていこうと思った。佐助を忘れた自分を演じようと思った。
 そう決めた瞬間、初めて涙が零れた。


 だから、この花に水をやるのは、最後の悪足掻きなのだ。何にも執着せず、何も残さず逝った佐助が唯一残していた花。幼い自分が佐助に渡した種を見つけたから、と大切に育てていた花。
 彼を想わせる唯一のもの。これがなくなってしまったら、自分は完全に佐助を忘れなければいけない。
 そう決めた。

 だから、少しでも長く彼を憶えていられるように。
 花が散らないようにと心を砕いて世話をし続ける。

 いつか散ることなんて分かっている。
 それでも、この小さな存在に縋っているのだ。





書きながら二転三転した所為で、微妙に支離滅裂っぽい話(いつも通りか)。
精進します・・・・・・。