傍らに眠る男の、そのあまりに安穏とした表情に、首でも絞めてやろうかなどという物騒な考えが頭を過ぎる。そっとその顔に手を伸ばすが、触れたのはその特徴的な銀髪。指で軽く梳けば、少し固めの髪がするすると流れた。
海賊紛いのことをして船に乗ってばかりのくせに、この男の髪はあまり痛んではいない。普通潮風に晒されれば、多少なりとも痛むものなのだが。
とはいえ、それ以上に不思議なこの肌の白さを思えば、その程度大した問題ではないか、と独り言ちる。要は、自分が触れたとき不快でなければいいのだ。
そのまま指を目元、頬、首筋と滑らせる。
どくどくと脈打つものを感じ、そこで指を止める。
もし今、自分がここに刃を突き立てたら。
いや、ここを覆う肉を噛み千切れば、この男は死ぬだろうか。
死ぬかも知れぬな、とぼんやり思いながら、そんなところを探られても目覚めない元親を思った。
何故、目覚めない。何故、起きない。死にたい訳でも殺して欲しい訳でもないだろう? いつ自分が同盟を反故にしてその首を狙うか分からぬというのに。何故、そんな風に眠っていられる。
する、と指を伸ばし、掌全体でその咽喉を覆う。
このまま力をこめたら、この男はどうするだろうか。
「……そのまま、締めてみるか?」
静かに問いかけられて、反射的に手を離す。
先ほどまで閉じられていた目は開かれ、真っ直ぐにこちらを見ていた。殺されていたかもしれないのに、その口元には笑みを浮かべていて。
「……、…今ここで……貴様を殺す理由など、ない」
「そうか? 何の犠牲も出さずに四国が手に入るかもしれねぇぜ」
何とか返した言葉に、楽しそうに笑まれる。
分かっているのか。殺されてもいいとでも言うつもりか。犠牲が出ないだと? 確かに双方の兵に犠牲は出ぬかも知れぬ。だが、それでも。
「……貴様が犠牲になっているだろう」
その言葉に目を丸くして。先ほどまでとは違う、嬉しそうな笑みを浮かべる元親を見て。
いつか来る終わりを、――― 冷えた未来を想った。
そのとき、地に伏すのはどちらなのだろうと。
もはや無視出来ぬほどに酷くなってしまった、この胸の軋み。
あぁ、どうして。
(……どうして、このような痛みを我に教えたのだ)
海賊紛いのことをして船に乗ってばかりのくせに、この男の髪はあまり痛んではいない。普通潮風に晒されれば、多少なりとも痛むものなのだが。
とはいえ、それ以上に不思議なこの肌の白さを思えば、その程度大した問題ではないか、と独り言ちる。要は、自分が触れたとき不快でなければいいのだ。
そのまま指を目元、頬、首筋と滑らせる。
どくどくと脈打つものを感じ、そこで指を止める。
もし今、自分がここに刃を突き立てたら。
いや、ここを覆う肉を噛み千切れば、この男は死ぬだろうか。
死ぬかも知れぬな、とぼんやり思いながら、そんなところを探られても目覚めない元親を思った。
何故、目覚めない。何故、起きない。死にたい訳でも殺して欲しい訳でもないだろう? いつ自分が同盟を反故にしてその首を狙うか分からぬというのに。何故、そんな風に眠っていられる。
する、と指を伸ばし、掌全体でその咽喉を覆う。
このまま力をこめたら、この男はどうするだろうか。
「……そのまま、締めてみるか?」
静かに問いかけられて、反射的に手を離す。
先ほどまで閉じられていた目は開かれ、真っ直ぐにこちらを見ていた。殺されていたかもしれないのに、その口元には笑みを浮かべていて。
「……、…今ここで……貴様を殺す理由など、ない」
「そうか? 何の犠牲も出さずに四国が手に入るかもしれねぇぜ」
何とか返した言葉に、楽しそうに笑まれる。
分かっているのか。殺されてもいいとでも言うつもりか。犠牲が出ないだと? 確かに双方の兵に犠牲は出ぬかも知れぬ。だが、それでも。
「……貴様が犠牲になっているだろう」
その言葉に目を丸くして。先ほどまでとは違う、嬉しそうな笑みを浮かべる元親を見て。
いつか来る終わりを、――― 冷えた未来を想った。
そのとき、地に伏すのはどちらなのだろうと。
もはや無視出来ぬほどに酷くなってしまった、この胸の軋み。
あぁ、どうして。
(……どうして、このような痛みを我に教えたのだ)
04. どうしてこんな痛み俺に教えたんだ
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