いなくなって欲しくない。いつまでも傍にいて欲しい。
 だから。

 その言葉を、そう思う根源となる想いを、相手に伝えたいと思うのに。
 その望みを否応なく叶えてしまうものの所為で、言うことが出来ない。

 相手は忍で、己は武士。そんなことは気にせずとも良い、と何度言ったところで、佐助にはいつも躱されてしまう。更に言い募ったところで、曖昧に笑われるだけ。
 忍らしからぬ性格ではあるけれど、決してその領分を越えようとはしないから。 その一線を違えることはない男だから。


 だから、いなくなるなと言えない。それは命令になってしまう。
 この想いを告げたところで、それは一緒だ。受け入れてくれたとしても、その意味を己は勘繰ってしまうだろう。
 それは、"主"が言ったからなのか、と。


 余りの矛盾に眩暈がする。佐助自身を手に入れた代わりに、何よりも自分が望むものは手が届かなくなってしまったのだ。
 その上、傷付けるのも傷付くのも怖くて何も出来ないなんて。悲劇など通り越して、いっそ滑稽なほどだ。


 だから、その背にだけ問い続ける。
 答えなど聞きたくないから、気付かれないように密かに。

 好きになっても、と。





(拒絶されると、ちゃんと分かってる)


01. 好きになってもいいですか