困らせないでよ。


 そう言って、お前は曖昧に笑う。
 分かってる。この想い自体が迷惑で。この関係は互いの首を絞めることになる。それでも、と望めば、そりゃ困るだろう。

 でも。そんなの構わないほどにお前が欲しいんだと。
 この許されることのない望みの代わりに、あれこれと無理難題を言って困らせるんだ。

 まだ帰るな、とか。ここにいろ、とか。そんな、本当ならちっぽけな筈の願い。
 それらが切り捨てられない限り、お前がそうやって困ってくれる限りは。お前の、傍に。隣にいていいのだと思うから。
 自分の傍にいたいと思ってくれているのだと、思い込めるから。


 真実なんて関係ない。相手の真意が何処にあろうと構わない。
 ただ、触れた温もりに縋れるのならば、それでいい。





(知ってしまえば、手すら伸ばせなくなる)


03. あんまり困らせないで