欠点も、不満だって、数え切れないほどある。
 俺の都合なんてちっとも考えてくれないとか、すぐ団子食いたがるとか、忍以外の仕事押し付け過ぎとか。挙げきれないくらいある。大体、あの人は俺に対して我儘だ。
 実際、今現在も、これも護衛の一環だとか何とか言われて鍛錬の相手をさせられている真っ最中だ。まだ忍の仕事とか夕餉の下拵えとか、しなくちゃいけないことは山になっているというのに。
 こんなことしている場合じゃないんだけど、という胸中だけの呟きが旦那に伝わる訳もなく、至極楽しそうに双槍を振るっている。

 あぁ、欠点だと思っているくせに。こうやって楽しそうに笑っている姿や、嬉しそうに俺の名前を呼んでくれる声とか。
 たったそれだけで、もう全て許せる気になってしまうなんて、大概俺も馬鹿だ。こうやって真っ直ぐ俺を見て、俺だけに意識を集中してくれる、それだけで。


 叩きつけられるように打ち込まれた槍を軽くいなし、その勢いを利用して向かってきた身体を地面に崩す。旦那は抑え込まれた事実に悔しそうにその表情を歪めるも、すぐに嬉しそうなものにその表情を変えた。
 やはり佐助は強いな、さすがだ、なんて満面の笑顔。あぁもう、何で。何でそんなこと、言うんだ。

 はいお仕舞い、と軽く笑い、適当に言い繕ってその場を後にする。旦那から充分離れたことを確認して、知らず詰めていた息を吐き出した。
 この想いは秘めておこうと決めたというのに、自覚したばかりのこの想いは、まだまだ簡単にその決意を揺るがせる。
 触れてしまいたい、告げてしまいたい、手にしてしまいたい。許されない想いが、体中を駆け巡る。



「言える訳……ないよねぇ…」



 誰に聞かせるでもなく呟いた言葉に、答えるものは何もなく。
 ただ、空気に静かに融けた。





(きっと告げることはないけれど、それでも、ずっと)


05. 好き / 君が好きだということ