闇に生きる彼を救おうだとか、彼に幸せをあげるためにだとか。そんな大それたことを考えたことは、幸村には一度だってない。
 そんな考えは佐助に失礼だというのはよく分かっている。彼は幸村などより、よほど何でも出来る。優秀な忍である佐助なら、真田家を離れたとしても他家が放ってはおかないだろうし、器用な男だから忍以外でも生きていけるのではないか。彼が生きていくのにどうしても必要なものなど、本当は此処には何もないのだ。

 人は幸村を、戦忍で影の人間である佐助を光に連れ出した聖人のようにいうが、それは違う。幸村が、佐助を必要としているのだ。
 真田の若虎としてではなく、ただ"幸村"を大事にしてくれる佐助を。

 自分に課せられているものを重荷だとは思わないが、それも彼が隣にいてくれるからこそだ。自分を無条件で信じ、支え、守ってくれる彼がいるから、幸村は周囲が言うような人間でいられるのだ。
 彼を失うことなど、幸村には考えられない。例え他の人間が何人傍にいたとて、そこに佐助がいないなら同じだ。例え、それが敬愛してやまない信玄であったとしても。
 信玄こそ幸村の目標であり、指針だ。だが、佐助は幸村が幸村であるために必要なのだ。
 そう、救われているのは、幸村なのだ。

 小さくその名を呼べば、すぐに声が返ってきて、何処からともなく姿が現れる。そしてずっと変わらない笑みに触れて、やっと己になれる。一人ではない、皆に愛される"幸村"になれるのだ。





(いつだって欲しているのは自分)


02. 隣にいてもいいだろうか?