ずっと、このままでいられたらいいのにな。お前と俺、このまま二人で。

 そんな元親の呟きに、元就は嫌悪から眉を顰める。何を愚かなことを言っているのかと視線だけで蔑まれ、元親は満足したように笑った。
 そう、元就はこのままでいいのだ。こんな微温湯のような関係は宵闇の中でしか成り立たず、戦場に立てば周りは全て敵。その思いが崩れることなどあってはならない。
 間違っても、陽の下でまで元親を信じるようになどなってはいけないのだ。それは動揺を、隙を生む。元就自身を、死に近づける。

 本当は、全てを以て彼の味方であれたら、と元親は思う。彼の力になり、彼の為だけに生きれたら、と愚かな夢想をすることがある。そしてその度に捨てられないものを抱えている己に絶望するのだ。
 いつまでも彼と共に生きていられたら、そう願うのに、いつ自身が彼の敵として立ちはだからなければならないかも分からない。

 だから、せめて己は誰よりも愛しい彼に孤独を贈る。
 彼があっけなく死んでしまうことのないように。誰かに殺されてしまわないように。

 その代わり、元親は元就を一人にはしないと誓う。例え敵となって側から離れてしまう日が来るとしても、必ずこの空の下に居続ける。彼を孤独にするしか出来ないような世界に、一人で遺して逝ったりはしない。
 孤独にしておきながら一人にしないとは矛盾もいいところだ。だが、これが元親にとって元就に注げる唯一の愛情なのだ。

 既に己から視線を逸らしてしまった元就の、端正な横顔を見つめる。
 きっと、あの頬に光の中で触れられるのはただ一度きり。血に塗れ、冷えていく肌。ただ、そのときだけなのだ。





(最期の君を看取った、その後で)


05. 君を置いて逝ったりしない