君の顔を見た瞬間。
自分を支えていた最後の糸が、ぷつん、と音を立てて切れた気がした。
Extra ・ 物語の終わりに
 身体を支えられなくなって、そのまま地面に倒れ込む。
 もう痛覚どころか全ての神経が麻痺しているような状態で、地に伏せても何も感じなかった。

「……大佐……?」

 君が近寄ってくる気配。うつ伏せの状態では君の表情は分からない。君の手が身体に触れて。息を呑んだのが分かった。
 どうかしたのか、と思って目線だけを動かすと、自分の身体からおびただしい量の血液が流れ出していた。そういえば、何か寒い気がする。意識も何処か虚ろだ。
 今までも、「死」に近いところまでいったことはあるが、ここまでは初めてだ。多分、助からないだろう。


「―――――― っ………何でっ……何でだよ!!!!!」


 呆然としていた君が叫ぶ。悲痛な声。助けて、と叫ぶ声。そんな声を出して欲しくなくて。動こうとしない身体を無理矢理に仰向ける。
 霞みがかった視界の君は、大きな金の瞳にたくさん涙を溜めて。ただ身体を震わせていた。

 あぁ、泣かないで。君に泣かれるのは、とても辛いんだ。

 でも、慰めるための言葉を紡ぐことが出来なくて。
 だから、せめて君に微笑う。


 エゴだと分かっている。このことが君を苛み、苦しめるかもしれない。
 それでも、私は。

 君を守れたことが誇らしい。君を守れたことが、何より幸せなんだ。

 私は、この結末を、決して後悔はしていないんだと。
 君に、知っていて欲しい。


 何とか声を出そうと試みて、それに気付いた君が顔を寄せる。
 君には、きっと、どれだけ謝っても足りないだろう。最後の最後まで、こんなエゴに付き合わせてしまって。でも、君には知っていて欲しい。



「―――――― 君、を……守れて………良かっ、…た……」



 私は、君が、幸せを手にすることを望む。それが、見知らぬ誰かの隣でも、それで良いと思う。
 でも、それと同じくらいの強さで、君が私に囚われることを望んでいる。君が私のことで傷を負い、心に抱えて生きてゆくことを望んでいる。
 私と共に、生きて居てくれることを望む。


 どれだけ頭を下げたって足りない。こんなエゴの犠牲になる君。

 それでも、忘れないで欲しい。
 私が、確かに君の傍に居て。誰よりも、君のことを想っていたことを。