「大佐」
執務室のドアを開いて、笑って私の名を呼ぶ君がいて。
手を伸ばそうとして。
眼が覚めた。
周囲を見渡してみると、そこはいつもの自分の執務室。もちろん、夢に出てきた彼はいない。どうやら、心地よい日差しに誘われて転寝をしてしまっていたらしい。ホークアイ中尉に見つかる前に目覚められたのは幸いだった。ちろん、まだ仕事は山積み。そんなところを彼女に見つかったら、問答無用とばかりに発砲されるだろう。
積んである書類から、一番上のものを手に取って視線を走らせてはみるが、全く頭に入ってこない。これではいけない、と分かってはいるのだが、どうしようもない。自分の頭の中を占めるのは、今ここにいない、ただ一人のことだけ。
「そろそろ君が旅立って4ヶ月か・・・・」
書類を机の上に放って呟く。
そう、確かその位だ。彼がここを最後に訪れてから。彼と自分自身の事情を思えば、その位逢えないことは仕方のないことだ。でも。
夢に見るほど、私は彼に逢いたいのか。それとも、夢に見たから逢いたくなったのか。
そのどちらなのかは分からないけれど。
「無事だといいが・・・・・」
夢の中で聴いた君の声。夢の中で逢った君の姿。
思い出してしまうと、もう、・・・・・どうしようも、ない。
「――― 逢いたい、な・・・・・・」
そのとき、ノックもなく、勢い良く執務室のドアが開かれた。
そこには。
「久しぶりだな」
夢と、全く同じ笑顔で笑っている君が居て。
「大佐」
夢と、全く同じ声で私の名を呼ぶ君が居たから。
夢でしたように手を伸ばしたら、君が消えてしまう気がして。
動けなかった。
「――― って・・・・・・あれ? 大佐?」
私の様子を訝しんだ君が近づいてくる。
君は、消えたり、しない。
そう言い聞かせて、目の前にいる君の頬に手を滑らせ、そのまま抱き締めた。君が何処にも行かないように。君が、消えてしまわないように。
「・・・・・・どうしたんだよ」
腕の中にいた彼が、困ったように溜息をつく。吐息がかかる。これは現実で、彼は夢の幻じゃない。彼は、ここに、いる。
深く息を吐いて。自分に確認するように言葉にする。
「―― 君がいるのが、夢、かと・・・・思って」
私のその答えに、彼は豆鉄砲を喰らったような表情をして。
少し考えこんで。
「大佐」
彼の声に顔を上げると。
ぐに。
音にするなら正にそんな感じで、彼は私の両頬を引っ張った。
べよん。
音にするなら正にそんな感じで、彼は引っ張った私の両頬を放した。
「――― って何をするんだ君は!!」
あまりのことに凍り付いていた私を残したまま執務室を立ち去ろうとしていた彼の後姿に叫ぶ。
彼の行動が突飛なのはいつものことだが、これはちょっと酷くないか? そう目線で訴えたが、彼はこちらを振り返りもせずに一言。
「夢じゃないって教えてやったんだよ」
いや、確かに夢かどうか確認する際に頬をつねるのはよく聞く話だが。これはそういうことじゃないだろう。
憮然としていると、彼はやっと振り返って。
「夢じゃなかっただろ?」
笑った。
何だか不条理で、納得がいかないのだけれど。こんな感覚を私に見舞ってくれるのは、間違いなく君だけで。目の前の君は、確かに君なんだな、と妙に実感してしまって。
笑いがこみ上げてきた。
「――― あぁ、そうだな」
席を立って、君の背後から腕を回して。
「お帰り、鋼の」
あぁ、君が、居る。
執務室のドアを開いて、笑って私の名を呼ぶ君がいて。
手を伸ばそうとして。
眼が覚めた。
夢の先
「―― 夢、か・・・」周囲を見渡してみると、そこはいつもの自分の執務室。もちろん、夢に出てきた彼はいない。どうやら、心地よい日差しに誘われて転寝をしてしまっていたらしい。ホークアイ中尉に見つかる前に目覚められたのは幸いだった。ちろん、まだ仕事は山積み。そんなところを彼女に見つかったら、問答無用とばかりに発砲されるだろう。
積んである書類から、一番上のものを手に取って視線を走らせてはみるが、全く頭に入ってこない。これではいけない、と分かってはいるのだが、どうしようもない。自分の頭の中を占めるのは、今ここにいない、ただ一人のことだけ。
「そろそろ君が旅立って4ヶ月か・・・・」
書類を机の上に放って呟く。
そう、確かその位だ。彼がここを最後に訪れてから。彼と自分自身の事情を思えば、その位逢えないことは仕方のないことだ。でも。
夢に見るほど、私は彼に逢いたいのか。それとも、夢に見たから逢いたくなったのか。
そのどちらなのかは分からないけれど。
「無事だといいが・・・・・」
夢の中で聴いた君の声。夢の中で逢った君の姿。
思い出してしまうと、もう、・・・・・どうしようも、ない。
「――― 逢いたい、な・・・・・・」
そのとき、ノックもなく、勢い良く執務室のドアが開かれた。
そこには。
「久しぶりだな」
夢と、全く同じ笑顔で笑っている君が居て。
「大佐」
夢と、全く同じ声で私の名を呼ぶ君が居たから。
夢でしたように手を伸ばしたら、君が消えてしまう気がして。
動けなかった。
「――― って・・・・・・あれ? 大佐?」
私の様子を訝しんだ君が近づいてくる。
君は、消えたり、しない。
そう言い聞かせて、目の前にいる君の頬に手を滑らせ、そのまま抱き締めた。君が何処にも行かないように。君が、消えてしまわないように。
「・・・・・・どうしたんだよ」
腕の中にいた彼が、困ったように溜息をつく。吐息がかかる。これは現実で、彼は夢の幻じゃない。彼は、ここに、いる。
深く息を吐いて。自分に確認するように言葉にする。
「―― 君がいるのが、夢、かと・・・・思って」
私のその答えに、彼は豆鉄砲を喰らったような表情をして。
少し考えこんで。
「大佐」
彼の声に顔を上げると。
ぐに。
音にするなら正にそんな感じで、彼は私の両頬を引っ張った。
べよん。
音にするなら正にそんな感じで、彼は引っ張った私の両頬を放した。
「――― って何をするんだ君は!!」
あまりのことに凍り付いていた私を残したまま執務室を立ち去ろうとしていた彼の後姿に叫ぶ。
彼の行動が突飛なのはいつものことだが、これはちょっと酷くないか? そう目線で訴えたが、彼はこちらを振り返りもせずに一言。
「夢じゃないって教えてやったんだよ」
いや、確かに夢かどうか確認する際に頬をつねるのはよく聞く話だが。これはそういうことじゃないだろう。
憮然としていると、彼はやっと振り返って。
「夢じゃなかっただろ?」
笑った。
何だか不条理で、納得がいかないのだけれど。こんな感覚を私に見舞ってくれるのは、間違いなく君だけで。目の前の君は、確かに君なんだな、と妙に実感してしまって。
笑いがこみ上げてきた。
「――― あぁ、そうだな」
席を立って、君の背後から腕を回して。
「お帰り、鋼の」
あぁ、君が、居る。