ロイ→エド? 七夕話
 七夕。引き裂かれた恋人達が唯一逢える日。


 はぁぁあぁあ。

 盛大な溜息をついた上司に、部屋にいたみんなの視線が集まる。それはもちろん心配ではなく、「さっさと仕事しろ」という恨みがましい目線だった。
 何故なら、この上司がここまで落ち込むネタなんて大体決まっているし、そのネタに関しては、上司が落ち込んでいる分には特に心配する必要がないからだ。
 むしろ、御機嫌でいるときの方こそ警戒が必要になる。自分と、上司の機嫌を自覚なく左右する、あの幼い錬金術師の身を守るために。

 明らかに居心地悪い思いをしているはずなのに、上司はそんなこと何処吹く風で、空を見上げては溜め息ばかりついている。
 この人の身の上なんてどうでもいいが、このままでは確実に残業に巻き込まれてしまう。どうするかな、と4人でひっそり話し合っているところに、扉が開く音がした。振り返ると、同僚であるホークアイが入ってくるところだった。

「大佐、どうしたんスか? 使い物にならないにも程があるんスけど」

 彼女なら知っているだろう、と当たりを付けて問い掛けたハボックに、ホークアイは無言で一枚の紙切れを差し出した。
 そこには、見たことのある、少し癖のある文字で、

「河が氾濫したから、そっちに戻るの中止する」

 とだけ書かれていた。

 まあ予想の範囲内だな、と4人は頷く。ならばこの対処法は、と4人が揃って目線を向けたとき、丁度ホークアイが愛銃に手を掛ける。
 これで残業は免れた、と手を合わせる4人の背後で数発の銃声が響いていた。


 七夕。一年で一番雨が降りやすい日。
―― って何かで読んだんですが。本当なんだろうか。
果てしなく一方通行なロイ→エド
 だって、暑いじゃん?


 機械鎧は熱が篭る。
 材質上仕方ないことだとは分かってる。ウインリィにどうにかならないか持ち掛けたら、あたしの作ったものにケチつける気!?とスパナ投げられたしな。耐えるしかないってことだ。

「うぅぅぅ……」

 で、今日は記録的とまではいかないが、それなりに暑い。
 じっとしていても汗ばむ陽気だ。暑いんだ。

「酷いぞぉ……」

 それに、さっき言ったような理由で、オレは暑さには弱いんだ。
 普通の人でさえめげそうな暑さだ。オレに至っては、もう何もかもが不愉快なくらいの暑さなんだ。
 だから。

「鋼のぉ……」

 クーラーが壊れたとかで蒸し暑い司令部で、いきなりオレに抱きつこうとした大佐を問答無用で蹴り倒して。
 蹴り倒された大佐が、今足元で何だかどうしようもない感じで涙を流していたって、それはオレの所為じゃないと思うんだ。


 蹴り倒してから考えること2分。
「オレは悪くない」という結論に達した。

「よし、じゃぁ大佐。報告書はここに置いていくからな。何か不備があったら、図書館にいると思うからよろしく。じゃぁ」

 さっさと行くか。図書館はクーラーきいてる筈だからな。
暑いときって、取り敢えず八つ当たりたくなりますよね☆って話(待て)。
ロイ→エド?
 君は、知らない。


 軍という縦社会の中にいれば、不条理に感じることなんかいくらでもある。納得のいかないこと、理解すらしたくないこと、そんなのは日常茶飯だ。
 この世界には自分で選んで足を踏み入れた。そして、この道を選んだことも後悔はしていない。

 それでも、たまに、本当にたまにだけれど。
 全部投げ出したら楽になる、という考えが頭をよぎることもある。


「大佐ー!! 訳分からん理由で人を呼びつけるんじゃねぇ!!!!」


 それでも、現実を、自分自身を真っ直ぐ見据える君を見ていると負けていられない、と思うんだ。
 その姿を見れば、それだけで。


  私が君にこうやって助けられている、なんて。
君は、知らないだろう?

 知らせるつもりも、まだないけれどね。
 君に全てを伝えるとき、それは。


「ドアくらい静かに開けたまえ、鋼の」


 この想いがどうしようもなくなったときだから。
えーと…何なんだろう(帰れ)。
まだ自覚したばかり? というか意地っ張り大佐(笑)。
ロイ→←エド 別れ話
 その瞬間。
 全てが止まって、動けなかった。


 雨に打たれている君は、冷えて、元々白い肌が更に色をなくしていて。なのに、その金の眼だけは、強く、真っ直ぐ、私を見つめていて。
 ただ、私の言葉を待っている。

「……しだけ、…ったのか……」

 絞り出した声は、見っとも無いほど掠れ、震えていた。

「好きだったのは…私だけだったのか……」

 私の言葉に、君は少し痛みを耐えるような表情をして。
 そして、微笑って、言った。


「好きだったのは、オレだけだったんだよ」


 そう言い残して、私に背を向けた君を引き止めることが出来なくて。
 その、握り締めていた手を掴むことが出来なくて。

 今となっては、君の真意を知る術もない。
別れネタ。だいすき!(お前)
アル→ウィンのようなアル←ウィン
 やっと、気付いたのかもしれない。


「……え?」

 思わず漏れた声は、そんな間抜けなものだった。
 そんな僕に構わずウィンリィは続ける。

「だから!!あたし最近綺麗になったでしょって言ってるのよ!! なったわよね!? ね!!??」

 詰め寄るウィンリィの笑顔に、ただぶんぶん首を縦に振る。  横に振るなんてことしたら……考えるのは止めておこう。

「どうしたのさ、いきなり」
「よくぞ訊いてくれました!!!!」

 ウィンリィは、ばっと僕の隣で立ち上がる。そして拳を握って突き上げながら、僕に向かって宣誓した。

「実は!!今、恋をしているのです!!!!!」
「―――――― え」

 ……思わず漏れた呟き。
 固まっている僕に気付かず、ウィンリィはその人について話し始めた。

 ウィンリィ。家族のような、幼馴染。

 そんな彼女が、好きな人ができたと嬉しそうにしている。
 幼馴染なら、喜んであげるところだろう。家族として、喜んであげるところだろう。

 なのに、何故か。何故だか、少し。胸の中がしっくりこない。何か、何か、…違う気がする。
 それが何か、今の僕には分からないけれど。

 表情が分からないことが、初めて役に立ったと感じた。
アルウィンー。バイト中に脳内で展開していた話(真面目に働け)。
続くかもしれないし続かないかもしれない(いい加減)。