やさしくなんてしなくていい、と。
ひどくしてくれていいのだ、ときみはないた。
驚いて自分の下に横たわるエドワードの顔を見れば、彼は静かに泣いていた。涙は一粒も零さず、けれど確かに泣いていた。見えない涙を拭うようにその頬を撫でれば、それを拒むように顔を背けられる。
ロイがゆっくりと身体を起こせば、びくりとエドワードの身体も震える。怒らせたとでも思っているのだろうか。
いや、確かに怒りが全くない訳ではない。捨て鉢になって自らを大切にしない行為をロイは嫌悪していたし、何よりエドワードが恋人であるロイに対してそのような態度をとったことに対して怒りを感じていない訳がない。
だが、それは純粋な怒りでも、憎しみを帯びたものでもなかった。どちらかといえば、胸を軋ませるような―――哀しみに近い怒りだった。
やさしくしなくていい。ひどくしていい。あんたがしたいように、すきなようにしてくれればいい。
おれのことなんかかんがえなくていい、いたくてもいいんだ。
ベッドに押し倒されると、囁くようにエドワードはそう口にした。聞こえるか聞こえないかの声量の、今にも泣き出しそうな、哀切を含んだ声音。
当然密着していたロイの耳には届いた。だが、救いを求めるかのようなその声と、罰を望むような言葉にロイは動けなかった。どうすれば彼が笑ってくれるのか分からなかった。
エドワードに何があったのか、正確なことはロイには分からない。
彼が事件に巻き込まれたことは、知っている。だが、それは彼自身による報告からの情報が主だ。事件に関わった憲兵からの報告も受けているが、直接解決したエドワードの報告書以上の詳細さを望めるべくもない。
彼がロイに知られたくないと隠していることがあったとしても、それをロイが知ることは出来ない。例え、こうやって隠していることだけは気付けたとしてもだ。
何があったのだろうか。
泣きたいのに泣くことすら許せないようなことが?
自分を投げ出してしまいたくなるようなことが?
どれだけ自分の内で問うたところで、答えが分かる筈もない。エドワードが口を割らない以上、どうしたってロイには知りようがない。どれだけ知りたいと望んだとしても、だ。
だが、これだけは分かる。
彼が罰を受けなければならないことなど、ないのだ。
幼いが故に真っ直ぐな心根。清濁を合わせて受け入れる強さを持った彼が、こんな罰を受けなければならないことをする筈がない。そんなことを出来る筈がない。
それは、エドワードという人間を知っているからこその確信だった。ましてや、あの弟が傍にいて、そんな事態を許す訳がない。
だから、エドワードがこんなことを言わなければならない理由は、何一つないのだ。
それでも。
そう、それでも、とロイは思う。そうだ、人はその弱さ故に罰を求めてしまうこともロイは知っている。罪は償ったのだと、自分を楽にするために。
だからこそロイはエドワードの言葉を受け入れてしまうことは出来ない。彼の言うまま、彼を傷付けることは出来ない。
エドワードは、もっと知るべきなのだ。自分は、許されていいのだと。罪など背負ってはいないのだと。
そっとあやすようにエドワードの瞼に優しく口付ける。拒もうとエドワードの手が動くが、シーツに縫い付けてその抵抗を抑える。そして、何度も、何度も口付ける。
泣きそうにその表情が歪むが、ロイは無数の口付けを降らせるのを止めようとは思わない。むしろ見えない涙を吸い取るように、その眦に唇を落とす。
抵抗の意思がなくなったことを確認してから少し上体を起こし、優しくその名を呼ぶと、堪え切れなくなったのか、ついにその大きな金の瞳から一粒の涙が零れた。
小さくしゃくりあげる声に紛れて、なんで、と弱弱しい問いがロイに向けられる。
その様子に、ロイは優しく微笑んで答える。
きみがすきだからだよ、と。
きみがすきだから、きずつけたくない。いたくしたくない。やさしくして、あまやかして、きもちよくなってほしい。
わたしのしたいように、しているんだよ。
ゆっくりと髪を梳かれながら、繰り返される言葉。
すきだよ、と。何度も、何度も、繰り返される。
ロイの答えを受けてそっと閉じられた瞳から、エドワードはもうひとつぶ、涙をこぼした。
ひどくしてくれていいのだ、ときみはないた。
ひとつぶカタルシス
小さな声で紡がれた言葉に、ロイは動きを止めた。驚いて自分の下に横たわるエドワードの顔を見れば、彼は静かに泣いていた。涙は一粒も零さず、けれど確かに泣いていた。見えない涙を拭うようにその頬を撫でれば、それを拒むように顔を背けられる。
ロイがゆっくりと身体を起こせば、びくりとエドワードの身体も震える。怒らせたとでも思っているのだろうか。
いや、確かに怒りが全くない訳ではない。捨て鉢になって自らを大切にしない行為をロイは嫌悪していたし、何よりエドワードが恋人であるロイに対してそのような態度をとったことに対して怒りを感じていない訳がない。
だが、それは純粋な怒りでも、憎しみを帯びたものでもなかった。どちらかといえば、胸を軋ませるような―――哀しみに近い怒りだった。
やさしくしなくていい。ひどくしていい。あんたがしたいように、すきなようにしてくれればいい。
おれのことなんかかんがえなくていい、いたくてもいいんだ。
ベッドに押し倒されると、囁くようにエドワードはそう口にした。聞こえるか聞こえないかの声量の、今にも泣き出しそうな、哀切を含んだ声音。
当然密着していたロイの耳には届いた。だが、救いを求めるかのようなその声と、罰を望むような言葉にロイは動けなかった。どうすれば彼が笑ってくれるのか分からなかった。
エドワードに何があったのか、正確なことはロイには分からない。
彼が事件に巻き込まれたことは、知っている。だが、それは彼自身による報告からの情報が主だ。事件に関わった憲兵からの報告も受けているが、直接解決したエドワードの報告書以上の詳細さを望めるべくもない。
彼がロイに知られたくないと隠していることがあったとしても、それをロイが知ることは出来ない。例え、こうやって隠していることだけは気付けたとしてもだ。
何があったのだろうか。
泣きたいのに泣くことすら許せないようなことが?
自分を投げ出してしまいたくなるようなことが?
どれだけ自分の内で問うたところで、答えが分かる筈もない。エドワードが口を割らない以上、どうしたってロイには知りようがない。どれだけ知りたいと望んだとしても、だ。
だが、これだけは分かる。
彼が罰を受けなければならないことなど、ないのだ。
幼いが故に真っ直ぐな心根。清濁を合わせて受け入れる強さを持った彼が、こんな罰を受けなければならないことをする筈がない。そんなことを出来る筈がない。
それは、エドワードという人間を知っているからこその確信だった。ましてや、あの弟が傍にいて、そんな事態を許す訳がない。
だから、エドワードがこんなことを言わなければならない理由は、何一つないのだ。
それでも。
そう、それでも、とロイは思う。そうだ、人はその弱さ故に罰を求めてしまうこともロイは知っている。罪は償ったのだと、自分を楽にするために。
だからこそロイはエドワードの言葉を受け入れてしまうことは出来ない。彼の言うまま、彼を傷付けることは出来ない。
エドワードは、もっと知るべきなのだ。自分は、許されていいのだと。罪など背負ってはいないのだと。
そっとあやすようにエドワードの瞼に優しく口付ける。拒もうとエドワードの手が動くが、シーツに縫い付けてその抵抗を抑える。そして、何度も、何度も口付ける。
泣きそうにその表情が歪むが、ロイは無数の口付けを降らせるのを止めようとは思わない。むしろ見えない涙を吸い取るように、その眦に唇を落とす。
抵抗の意思がなくなったことを確認してから少し上体を起こし、優しくその名を呼ぶと、堪え切れなくなったのか、ついにその大きな金の瞳から一粒の涙が零れた。
小さくしゃくりあげる声に紛れて、なんで、と弱弱しい問いがロイに向けられる。
その様子に、ロイは優しく微笑んで答える。
きみがすきだからだよ、と。
きみがすきだから、きずつけたくない。いたくしたくない。やさしくして、あまやかして、きもちよくなってほしい。
わたしのしたいように、しているんだよ。
ゆっくりと髪を梳かれながら、繰り返される言葉。
すきだよ、と。何度も、何度も、繰り返される。
ロイの答えを受けてそっと閉じられた瞳から、エドワードはもうひとつぶ、涙をこぼした。
何か……ラブくも甘くもないですね……。うーん。
最初は微エロ注意のつもりで書いてたんですが、微ですらなくなったとか(お前)。
最初は微エロ注意のつもりで書いてたんですが、微ですらなくなったとか(お前)。