「あぁ、もう毛布落ちちゃってる! 兄さんたら!!!」
ついさっきウィンリィが兄さんに掛けたばかりの毛布が、床に落ちてその用を成さなくなっている。
相変わらずの寝相の悪さに誰にも分かるはずのない苦笑を漏らして、もう一度その身体に掛けなおす。そんな僕の背後から声がかかった。
「アルは、まだ休まないの?」
僕と眠ってる兄さん以外誰もいないはずの部屋に響いた声。聴きなれた、でも久しぶりのその声に振り向くと、思ったとおりの人物がドアのところに立っていた。
僕はこの身体になってから、休養というものを必要としなくなっていた。ずっと立っていようと走っていようと疲れることはないし、眠ることもない。それでも、精神的な休養として、夜は心を無にする ―― いわゆる瞑想のようなものをすることにしていた。
しかし、それだって普通の人にとっての睡眠のように必ずしも必要とするものではなかった。ウィンリィだってそれは承知している。
でも、明日セントラルへ向かえば、また忙しい日々が始まる。スカーのことだってある。だから、休めるうちに休んでおけ、ということなのだろう。
「うん、もう少ししたらね」
僕のその返答に、ウィンリィは少し考えこんで。
「じゃあ、その『少し』の間、あたしに付き合ってよ」
「えぇ!!??」
僕と違って、ウィンリィは当然睡眠を必要とする。ましてや、ここ数日兄さんの機械鎧を作っていてろくに寝ていないはずだ。
そんな僕の心配がどうやら気にいらなかったらしく、ウィンリィは少し拗ねた様子でそっぽを向く。そして、ぼそぼそと何か呟く。それは本当に小さな声だったのだけれど、僕にはちゃんと聞こえて。
「……だって、今回全然アルと話せてないじゃない」
その言葉に何だか温かい気持ちになって、冷たい筈の鎧の身体までも何だかぽかぽかしてくる。
本当は、ウィンリィのことを考えたら寝るよう言うべきなんだろうけど、話したいのは僕も一緒だ。
「……まだお湯残ってたっけ。何か飲む?」
その言葉に安心したようにウィンリィが微笑むから、僕も温かい飲み物を淹れるために台所に向かった。
「はい、どうぞ」
湯気をたてるマグカップを手渡すと、ソファに座っていたウィンリィが身体をずらし、僕が座るスペースを空けてくれる。
ここに座れ、ってことなんだと思うけど。僕は鎧姿で。もう夜で肌寒いのにウィンリィは薄着で。
だから、考えて迷って。ちょっと離れたところに腰を下ろした。ウィンリィは何か言いかけて、それでもそれについては何も言わずに、近況を話し出した。
小一時間も経っただろうか、ふぁ、と小さくウィンリィが欠伸をする。もう時間も遅いし、話も一段落。寝るよう勧めるとぼーっとした様子のまま頷き、部屋へと向かった。
その姿を見送って、さっきまでウィンリィが座っていた場所に手を当てる。
きっと、ウィンリィの体温で暖まっているはずの場所。なのに、僕には何も感じ取れない。
僕のこの身体は、その体温を奪うことしか出来なくて。
だから、近づけない。
僕の座っていた場所と、ウィンリィの座っていた場所。10センチ。
それが今の二人に許された距離。
ついさっきウィンリィが兄さんに掛けたばかりの毛布が、床に落ちてその用を成さなくなっている。
相変わらずの寝相の悪さに誰にも分かるはずのない苦笑を漏らして、もう一度その身体に掛けなおす。そんな僕の背後から声がかかった。
「アルは、まだ休まないの?」
僕と眠ってる兄さん以外誰もいないはずの部屋に響いた声。聴きなれた、でも久しぶりのその声に振り向くと、思ったとおりの人物がドアのところに立っていた。
僕はこの身体になってから、休養というものを必要としなくなっていた。ずっと立っていようと走っていようと疲れることはないし、眠ることもない。それでも、精神的な休養として、夜は心を無にする ―― いわゆる瞑想のようなものをすることにしていた。
しかし、それだって普通の人にとっての睡眠のように必ずしも必要とするものではなかった。ウィンリィだってそれは承知している。
でも、明日セントラルへ向かえば、また忙しい日々が始まる。スカーのことだってある。だから、休めるうちに休んでおけ、ということなのだろう。
「うん、もう少ししたらね」
僕のその返答に、ウィンリィは少し考えこんで。
「じゃあ、その『少し』の間、あたしに付き合ってよ」
「えぇ!!??」
僕と違って、ウィンリィは当然睡眠を必要とする。ましてや、ここ数日兄さんの機械鎧を作っていてろくに寝ていないはずだ。
そんな僕の心配がどうやら気にいらなかったらしく、ウィンリィは少し拗ねた様子でそっぽを向く。そして、ぼそぼそと何か呟く。それは本当に小さな声だったのだけれど、僕にはちゃんと聞こえて。
「……だって、今回全然アルと話せてないじゃない」
その言葉に何だか温かい気持ちになって、冷たい筈の鎧の身体までも何だかぽかぽかしてくる。
本当は、ウィンリィのことを考えたら寝るよう言うべきなんだろうけど、話したいのは僕も一緒だ。
「……まだお湯残ってたっけ。何か飲む?」
その言葉に安心したようにウィンリィが微笑むから、僕も温かい飲み物を淹れるために台所に向かった。
「はい、どうぞ」
湯気をたてるマグカップを手渡すと、ソファに座っていたウィンリィが身体をずらし、僕が座るスペースを空けてくれる。
ここに座れ、ってことなんだと思うけど。僕は鎧姿で。もう夜で肌寒いのにウィンリィは薄着で。
だから、考えて迷って。ちょっと離れたところに腰を下ろした。ウィンリィは何か言いかけて、それでもそれについては何も言わずに、近況を話し出した。
小一時間も経っただろうか、ふぁ、と小さくウィンリィが欠伸をする。もう時間も遅いし、話も一段落。寝るよう勧めるとぼーっとした様子のまま頷き、部屋へと向かった。
その姿を見送って、さっきまでウィンリィが座っていた場所に手を当てる。
きっと、ウィンリィの体温で暖まっているはずの場所。なのに、僕には何も感じ取れない。
僕のこの身体は、その体温を奪うことしか出来なくて。
だから、近づけない。
僕の座っていた場所と、ウィンリィの座っていた場所。10センチ。
それが今の二人に許された距離。
02. あと、10センチ
アルウィンもどきー!!!(もどきて) 9話のセントラル出発前夜なかんじです。
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