「……ふぅ…」


 細かい字ばかりを追っていた所為で、痛む目を閉じる。これが自分の仕事で、もちろん進んで選んだ道だとは分かってはいるが、こうも退屈な業務ばかりではやる気も削がれるというものだ。
 凝り固まった身体を伸ばすようにすると、窓の外の綺麗な夕焼けが目に入った。<世界の全てを、優しく赤く染めていく光。全てのものに平等で、誰のものにもならない。
 その孤高な在り方に、久しく逢っていない少年の姿が重なった。


 何故、君だったのか。それは幾度となく繰り返してきた問い。

 君は同性で。一回り以上も年下で。禁忌を犯していて。その為に、常に傍に居ることは叶わなくて。一番大事な人は弟で。その為なら自分だって何だって擲つことが出来て。
 この想いを否定する要素も、打ち消すための要素さえこんなに揃っているというのに。何故、それでも君でなくては駄目だと思ってしまったのだろう。


 私にとって君は、遠すぎて、近すぎて、手が届かない存在のはずだったのに。
 君が、笑うから。私の隣で、何だかとても嬉しそうに笑ったりするから。

 だから。
 手を、伸ばしても良いんじゃないか、なんて。そんなことを思ってしまったりして。
 君を、好きだと。そう、思ってしまったりして。

 この想いが、君には重荷以外には成り得る筈がないと分かっているのに。それでも、どうしようもないんだ。君のことが、ただ、好きで堪らないんだ。好きなんだ。
 この、一言を君に告げたとしたら、君はどうするだろう。


「……エド、ワード……」


 呼ぶことの出来ない名を、そっと呟く。


 何故、君だったのか。そんなことに理由なんてない。
 どうして、君じゃなくてはいけないのか。そんなこと、簡単過ぎて答えにもならない。


04. 別に、理由なんてない
想いを告げてしまえば上手くいくのに、相手の事情を理由にそれから逃げてしまう、みたいな感じを目指してたはずなんですが。……が。
うん……ねぇ?(何)


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